「桜木町に鉄道が開通した当時、車窓から見える桜木川や伊勢山の桜がまるで一枚の絵のように美しかったという。そんな風景を取り戻したいんだ」―桜木町駅前に桜の植樹を続けてきた画家の柴山静穂さんが、今年1月に闘病生活の末に亡くなった(享年69歳)。
柴山さんが植樹を思い立ったのは2007年春。がんの大手術からの退院後、桜の美しさに心を癒され、「慣れ親しんだ桜木町を満開の桜で彩りたい」と思うようになった。植樹に掛かる費用を負担しながら、画家仲間や友人に声を掛けて「桜木町に桜の木を植える会」を結成。土地を所有する横浜市に場所の提供を粘り強く交渉し続けた。3年越しでようやく許可を得て、初めての植樹が実現したのは2010年。駅前の日本丸に続く横断歩道そばとバスターミナルの一角に2本のヨコハマヒザクラの植樹を行った。
その後も活動を続け、次の植樹に向けて計画を進めていたが、昨年12月、再び病に倒れた。同会の佐倉幸子さんは「病床でも最後まで桜のことばかり気にしていた。車椅子でも参加すると意気込んでいたのに」と突然の死を悔やむ。
同会では、柴山さんの遺志を継いで予定通り3月29日に桜の植樹を行った。5本目の今回は、同駅が今年で開設140周年を迎えることから「汽車ポッポの桜」と名付けられた。式典では桜のそばに柴山さんの写真が飾られ、約100人の参加者が桜の成長と氏への感謝を込めて土入れを行った。同駅の東根孝志駅長は「柴山さんからは駅の新たなシンボルとして親しまれるような桜にしていきたいと話を頂いていた。その想いを大切に、今後も皆さんと成長を見守っていきたい」と話した。
参加者らは「彼が夢見たように駅前が桜で満開になる日を楽しみにしながら、植樹に尽力した柴山静穂という人物がいたことを語り継いでいきたい」と想いを馳せていた。
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