歴史を知って街守る
○…「今回の表彰は歴代の先輩方の積み重ねのおかげ。これを励みに、変わらず努力していきたい」と謙虚に喜びを語る。全国の消防団の中から、他の模範になるような消防機関にのみ与えられる表彰旗を受章した。今年、発足から119年目となる加賀町消防団の7代目団長に就任してから約1年。「今でも何かあると引退した先輩方から叱られますよ」と笑う眼差しはあたたかい。
○…中区山下町で建設業を営む家に生まれ、大学では工学部建築学科に進む。一級建築士の資格を取得し、ゼネコンに就職して現場監督を務めるなど根っからの技術者だ。現在は実家を継ぎ、不動産業を営む傍ら町内会や子供会の役員なども務める。消防団入団は40歳のとき。町内会の青年部仲間から、団員の席が空いたと誘われたのがきっかけだった。父親も戦時中から地域防災に取り組む筆頭だったという。「小さい頃から親父の話を聞いたり、火事を目の当たりにしてきたから、自然と地元のために何かしたいと思った」としみじみと語る。
○…入団してからは建築士や街の知識をフルに生かし消防活動に尽力。「山下町は昔、新田として埋め立てられた土地がほとんど。地盤が弱い上に、まだまだ木造建築も多く残っている。土地の成り立ちをしっかり勉強することが防災にも繋がる」ときっぱり。その言葉どおり、中華街で火災があった時は地元の人しか知らない裏路地から放水し、延焼を防いだことも。定年まであと3年、「これまで以上に地域住民や企業の理解を得て活動にあたっていきたい」と意気込む。
○…多忙な日々だが、「地域の活動に参加することが趣味みたいなもんだから」と目じりを下げる。8人の孫や、地元の子どもたちとの触れ合いも活力になっている様子。また月に1度は妻と旅行へ。「小笠原とか沖ノ島とか、島巡りが好きなんだよ」と、その探究心はまだまだ尽きない。