地産地消×都市での挑戦(下) 「地産地消」の一歩先へ 市内に広がる取り組み
中区西区をのぞく横浜市全体でみると、意外と身近な場所に畑が広がっている。市内の農家戸数約4200戸、農地面積は約3千haといずれも県内トップ。畜産農家は牛豚鶏あわせて46戸。横浜ブランドの豚肉「はまぽーく」などもおなじみだ。
横浜市では地産地消の担い手を支援する「はまふぅどコンシェルジュ講座」を開催、横浜産の農畜産物を使ったメニューを提供する飲食店を「よこはま地産地消サポート店」として紹介するなど、地産地消を推進している。
アウトレット野菜で農家を応援
西区で飲食店を経営する椿直樹さんは、10年前に「横浜野菜推進委員会」を発足。横浜の野菜を使った料理教室を開催するなど、料理人の立場から農と消費者をつないできた。新たな試みで今年4月から月に1回、JR石川町駅前(国際カルチャーセンター内・次回8月31日)で、「アウトレット野菜」の販売を始めた。
「通常、規格外の野菜は市場に出回らず廃棄処分されてしまうが、形が曲がっていたり、大小サイズが揃わないだけで味の良さは変わらない」。椿さんはそんな規格外の野菜にも価値を付けて販売したいという想いから、あえてアウトレットを理由に値段を下げて仕入れることはしない。そのため販売価格は正規品と変わらないが「農家さんを応援する意味も含めて販売している。消費者の方々にも理解して購入いただいています」。実験的に始めたが、「美味しい」と評判も上々で手ごたえを感じている。
「店産店消」を楽しむ
最近では、メニューに使う野菜を店内で栽培する飲食店もでてきた。地産地消ならぬ「店産店消」だ。
山下町にある横浜トヨペット(株)本社のショールーム2階にある「カフェウエインズ」では、今年からLED光源を使った水気耕栽培システムを導入した。業務用冷蔵庫サイズの4段式のユニットの中で、グリーンリーフや大葉など常時4種類を栽培。店内で使用する全ての野菜をまかなえるほどの収穫量にはならないが、収穫した野菜はその日のランチのサラダやパスタの具材の一部として活用する。同店の小野寺功チーフは「無農薬で安全。環境に優しい企業イメージにも合っている。『次はいつLED野菜がでるの?』と楽しみにしているお客さんも多い」と話す。
顔が見える地産地消へ
「地元の食材を扱うだけでは本当の意味での地産地消にならない」と、(株)横浜ビールの太田久士社長は考える。経営する馬車道のレストラン「驛の食卓」では、野菜から調味料まで神奈川県内産にこだわったメニューを出しているが、必ず社長やスタッフは生産現場に訪れて、作り手の想いを共有する。「一番大切なのは、生産者の想いや歴史、ストーリーをお客様に伝えること。また地元で作られたものを知ることで、自分の街をもっと好きになってもらえれば」。地元を愛する心が地産地消を広めていく。
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