女性のためのがんフォーラム主催団体の理事長を務める 塩尻 瑠美さん 南区在住 72歳
がんと向き合って生きる
○…自身の罹患経験から、2015年に患者ががんと向き合うことを支援するNPO法人スペース・ノヴァを設立した。12月には昨年中区で開催した女性のためのがんフォーラムの第2弾を開催する。「働き盛りの若い女性たちに、がんについて考えてもらいたい」と話す。
○…南区で生まれ育つ。高校を卒業後、「外国から入ってきた学問で面白い」という父の勧めで大学では心理学を専攻。大学卒業後は慶応大学医学部精神神経科で助手を務める。心理療法や精神医学を学ぶ傍ら、少年鑑別所での鑑別審査、小児の定期検診の心理判定員などをこなした。臨床心理士として働く中、症状を理解した前提で患者に接する心理学者の姿に疑問を感じ、「物事の本質を知りたい」と60歳の時に大学で再び学び始め、哲学を専攻。修士課程まで進んだ。
○…修士課程在学中の65歳の時に卵巣がんを患う。元々内向的な性格だったが、病気を機に「残された時間は少ない」と感じるようになり、積極的に行動するようになったと語る。8時間を超える手術と抗がん剤治療を経て大学院を3年がかりで修了し、その後は川崎市内の病院で行われるがんサロンの運営を手伝うように。サロンで患者が適切な時期に治療を選択しなかったために手遅れになる現実を知り、「がんといかに向き合い、どこに助けを求めるかを考える『患者力』を身につける必要がある」という思いからスペース・ノヴァを立ち上げ、15年にNPO法人化した。
○…法人の顧問や講演に登壇する医師は自らが依頼し、多忙な医師らの予定を調整し1年以上かけて講演の準備を行う。15年には胸へのがん転移が見つかり、右のろっ骨一本を除去する手術を受けた。それでも「世間に恩返しをしなさい」という父の言葉を胸に、活動に奔走する。「今後は周りの人だけでなく、行政や企業など広く社会に発信していきたい」と力強く語った。
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