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戦禍の記憶、語り継ぐ 本郷町の金子さん

社会

掲載号:2018年8月9日号

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自作の資料を手に空襲当日の様子を話す金子さん
自作の資料を手に空襲当日の様子を話す金子さん

 終戦の日から73年。身をもって戦禍を体験した人が年々少なくなるなか、中区本郷町在住の金子光一さん(78)は5歳で経験した横浜大空襲の記憶を語り継ごうと、市内各地で語り部の活動を続けている。

苛烈な体験

 横浜の中心部が焼け野原となった1945年5月29日の横浜大空襲。当時5歳だった金子さんはその苛烈な体験からか、当日以前の記憶をほぼ失っている。

 朝食後、本郷町の自宅から道路を挟んだ友人宅に遊びに行った午前9時。街に空襲警報が鳴り響いた。「しばらく家にいたのですが、友人の親に『危ないから早く帰りなさい』と言われて外に出たときにはもう、あちこちから焼夷弾が降っていました」

 自宅まで100mというところだったが、目の前を歩いていた3、4人の大人たちの後について自宅とは逆の北方小学校の方面へ避難した。

 「気が動転していたんでしょうね。大人たちは面倒見の良い方で、火の手が上がって熱いなか、途中で防火水槽の水を大人たちが背の届かない私にかぶせてくれました」と振り返る。

 北方小から山手の方面に抜け、ワシン坂近くの小さな公園まで逃げた。気が付けば親もいない中、夜通し泣き明かした。

 一人息子を捜し歩いた両親と再会したのは、翌日の夕方。「職人だった父親に怒られると思いましたが、父はコブシを握りしめて天をじっと睨んだままでした」。本郷町の自宅は空襲で灰に。麦田のトンネルの入口まで見えるほど、辺りには何もなかったという。

そして語り部へ

 「こういう風景を二度と見たくない。見せたくない」という思いは心の中にずっとあったが、実際に活動を始めたのは3年前。母校・大鳥小で読み聞かせのボランティアを行う中で、当時の校長から「戦争体験を話してほしい」と頼まれたのがきっかけだった。

 子どもたちの前で話す際に気を付けたのは、ありのままを伝えること。「彼らにとっての戦争は、テレビや映画の世界。痛みを感じませんから。そういうもんじゃないんだよ、ということですね」

 昨年からは市内の他校や地域住民向けの講演も頼まれている。それをきっかけに「どうせやるなら」と図書館で参考資料を集め、避難経路を実際に歩いて現在の写真を撮り、70代後半にしてパソコンを使い40枚のスライド資料を作成した。

 資料の中に常に書いてあるのは「戦争は絶対にだめ」という一文。「あと何年出来るか分からないが、資料を継いでくれる人が出てくれればうれしいですね」と話した。
 

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