「当時の横浜、鮮明に」
歴史を明らかにする資料の一つとして用いられる写真。1923年に起きた関東大震災の被害を受けた横浜の様子を伝える約100年前の写真原版28枚がこのほど、鎌倉市内の旧西野写真館から横浜市に寄贈された。同資料は、横浜開港資料館=中区日本大通=で保管される。
全28枚の写真は、横浜出身の写真師・西野芳之助氏により撮影されたもの。2018年11月に西野氏が経営していた旧西野写真館=鎌倉市=で孫が箱の中から発見。横浜市に寄贈したいと申し出たという。
同資料は、全てフィルムが普及する前のガラス乾板。繊細で扱いが難しいものだ。写真1枚1枚にはどこで撮影されたか、メモも残されている。整理・分析を担当した横浜開港資料館の調査研究員・吉田律人氏は「約100年前のガラス乾板がほとんど傷みがなく現存しているのは奇跡に近い」と説明する。
開港資料館は12月23日、報道関係者を対象に同資料について説明会を行った。登壇した吉田氏は「関東大震災の写真は多く見つかるが、ほとんどは複製され手が加えられたもの。誰がいつ撮影したかわからない写真は多くある」と説明。同資料は、旧西野写真館があった場所から発見されたことや写真に収められた内容から「西野氏が関東大震災後の10日間前後に撮影したものだと考えられる」と強調する。
説明会では、写真原版と現像した資料を公開。同震災で消失した2代目横浜駅(現市営地下鉄高島町駅付近)や開港記念会館の時計塔が奥に見える中区本町通りの被災現場など、横浜市街地の震災後のありのままの様子が写されている。
戦前の記録誌にも
今回の発見は、大地震などを扱う記録誌に登場する写真の来歴解明にも寄与している。例えば、戦前に刊行された『大正大震火災誌』に掲載されている来歴がわからなかった写真が、今回発見されたものと一致した。吉田氏は、「オリジナルの原版が見つかったことで関東大震災当時の横浜の様子が鮮明になり、新たな発見に繋がるのではないか」と期待する。
1月30日から公開
これらの資料は1月30日から同館で開催が予定されている企画展示「レンズ越しの被災地、横浜―写真師たちの関東大震災―」で初めて一般公開される。「関東大震災時の横浜の様子が鮮明にわかる資料です。ぜひ足を運んでいただければ」と呼びかける。(問)同館【電話】045・201・2100
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