白いドレスを身にまとい白塗りの化粧で横浜の繁華街に立ち続けた「メリーさん」。地元の誰もが知っている存在でありながら、謎に包まれた人生から、これまで数多くの本や映画の題材となった。南区中村町在住のノンフィクション作家・檀原照和さんも長年、メリーさんを取材してきた一人。このたび、谷崎潤一郎との接点や関係など3万字を加筆した『白い孤影 ヨコハマメリー《増補改訂版》』を出版した。
谷崎との接点
檀原さんがメリーさんについて調べ始めたのは2000年頃。18年には筑摩書房から「白い孤影 ヨコハマメリー」を上梓した。その読者の中に谷崎の研究家がいた。檀原さんは「『谷崎とメリーさんは会ったことがあるのではないか』と言われたんです。二人を結びつける発想はなかったので新鮮だった」と振り返る。
檀原さんは谷崎の研究家やメリーさんの故郷の郷土史家に協力を求め、当時の状況を探り始めた。そして、谷崎が疎開先の岡山県で、メリーさんの親族の世話になった事実を突き止めた。閉鎖的な田舎で、優雅な暮らしをする谷崎一家が噂にならないはずはない。本著では親族らの証言や資料などを積み重ね、メリーさんのトレードマーク「白いドレス」が谷崎の影響である可能性なども考察している。
「メリーさんは戦争の犠牲者として語られることが多いが自分はそうは思わない」と檀原さん。取材を重ねたからこそ、「好きな格好をして24時間いるために街娼をしていたと感じている」。本著あとがきに、「『教養的な面白さ』を持ち込み、メリーさんの謎に迫ろうとした」とある。意図を問うと「メリーさんを横浜から自由にしてあげたかった」と話した。
出版記念イベントも
同著の出版記念が8月16日(金)午後7時からローカルブックストアーkita.(馬車道駅下車)で開催される。22年に「白い娼婦 ハマのメリー」を上演した舞踊家の飯干未奈さんと著者・檀原さんのトークなどが行われる。入場料1000円(同著持参で入場無料)。申し込みは【URL】https://peatix.com/event/4072249/から。
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