南消防団が4月1日、発足から10年を迎えた。2010年に寿、大岡の両消防団が統合して誕生。統合前後は歴史のある組織を一本化することに腐心し、団員が減少する危機もあったが、最近では事業所や女性への呼び掛けを強化し、定数100%を達成するなど、増加傾向。3月には団員増加が顕著で、地域防災力の向上に寄与したとして、総務大臣から感謝状が贈られた。同団は「10年を節目にさらに発展したい」と意気込んでいる。
南消防団の前身である寿消防団は1922年に「寿消防組」として、大岡消防団は39年に「大岡警防団」として発足。48年に市の機関として寿消防団、大岡消防団として組織された。主に南区の東部を寿、西部を大岡が受け持っていたが、指揮命令系統の一本化など、大規模災害時に素早く対応できることを目的に2010年4月に統合し、南消防団が発足した。
統合へ向けては両団幹部が4年間をかけて話し合いを重ねた。それぞれの団に歴史や風土があり、統合は容易ではなかったという。3月末で定年により退団した前団長の涌井正夫さんは「発足当初は、旧寿と大岡の団員の交流も少なく、壁があった」と当時を振り返る。
充足率低下を克服
発足時の団員は325人で定員の395人に対する充足率は82%。定年者の増加が続き、12年4月には充足率が6割台に低下。定員を100人以上割り込む深刻な状況となり、市内20団で充足率が最下位の時期もあった。団員の減少で思うように訓練が行えないこともあり、当時副団長だった涌井さんは「全団員に増員への意識を持たせるようにした」という。団員は区外企業に勤める会社員が多く、手薄だった区内事業所の従業員の勧誘に力を入れた。涌井さんは「人口が減り、会社員の団員は日中、区内におらず、昼間の災害のことを考えると、事業所の団員は重要」と語る。
さらに、15年には女性団員が「声楽隊」を結成。イベントで歌声を披露することで、団や団員への親しみやすさをアピールしたほか、女性団員の獲得にもつながった。現在は団員の約2割を占めている。団員増加とともに、旧組織の壁はなくなっていった。
18年11月に定数の395人に初めて到達。以降も退団者が出てもすぐに入団者が現れ、入団待ちの人がいる状況が続く。昨年8月には、初の高校生団員が誕生。同時に区内の高校に出向き、活動を説明する機会も作っている。4月1日から団のトップを務める有賀和彦団長は「在校中に入団しなくとも、消防団に関心を持ってもらえば、将来につながる」という。
事業所・学生獲得に注力
18年4月から19年4月に49人の団員が増えた。この功績が認められ、3月に総務大臣から感謝状が贈られた。全国約2200消防団の中から団員増加が顕著な43団だけが選ばれたもの。団員増加に取り組んできた涌井さんは「(充足率100%は)数年前には考えられない状況。これを維持できるようにしてほしい」と後進へ礎を築いた。
維持へ新人育成
今後の課題は充足率の維持と活動歴の浅い団員の育成。「消防団協力事業所」の一つでこれまで11人の団員を送っていた横浜南郵便局は、4月の人事異動によって数人が退団したが、後任者が入団することで人数は維持される。涌井さんは「事業所に顔を出して、関係をつないでいくことが大切」とアドバイスする。
新入団員の会社員や学生も参加しやすい時間に訓練を行うなど、地区ごとに分かれる6つの分団が工夫を重ねているという。有賀団長は「幹部と新入団員の間をつなぐ人材が不足している。さまざまな訓練を経験してもらうなどして教育していきたい」と話す。
数十年前は消防団が火災現場で消火活動に加わることもあったが、現在は消防署の隊員の支援や地域への防災知識の普及・啓発などに役割が変化しつつある。まつりなどの町内会行事に協力を求められることも増え、あらゆる場面で地域を支える存在になっている。有賀団長は「町内会や消防署と連携して、活動を活発にしたい」と発足10年を節目に新たなスタートを切る。
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