昭和初期に「見番」と呼ばれる芸妓の稽古場や事務所として使われた井土ケ谷上町第一町内会(佐々木哲夫会長)所有の町内会館=井土ケ谷上町35の23=を見番当時の外観に復元する工事が終わり、6月から使用を開始した。市の認定歴史的建造物である建物が80年以上も前の姿によみがえった。町内会は工事にかかった費用の寄付を呼び掛けている。
芸妓の稽古場兼事務所
会館の建物は1937年建築の木造2階建て。当時の井土ケ谷は花街で、多くの芸妓がおり、建物は芸妓組合の事務所兼稽古場だった。その後、58年から県警の警察官寮として使われ、76年に同町内会が取得。その際に外壁を金属製のトタン板にした。
市内唯一の見番
建物の正面は入母屋造と呼ばれる伝統的な構造。玄関の上部の欄間が細かい組子になっており、外観は見番の雰囲気を残していた。南区内では井土ケ谷のほかに、「日本橋」(現在の吉野町付近)や蒔田、弘明寺に花街があり、見番もあったとされるが、現在は残っていない。市によると、同会館は市内に現存する唯一の見番だという。こうしたことから、建物の価値が評価され、2018年9月に会館は市認定歴史的建造物となった。
認定は外観の復元が前提とされており、外壁を建築時の「押縁下見板張り」と呼ばれる板を少しずつ重ねたものに復元する工事を行うことを決めた。19年9月から工事を始め、約半年で完成。同町内会の佐々木会長は「板が少し明るい色だと感じたが、そのうち良い色になじんでくると思う」と満足している。会館はコロナ禍で使用をストップしていたが、6月から町内会の会議などで使い始めている。
災害時の拠点
同町内会は、防災を柱にしたまちづくり計画「地域まちづくりプラン」を進めている。プランは19年6月に市の認定を受けた。周辺地域は細い道が多く、大規模災害時に被害拡大が懸念されている。災害に強いまちづくりを目指すため、町内会館を災害時の拠点することなどを計画しており、今回の工事では耐震と耐火の工事も行って整備した。
寄付呼び掛け
同町内会の佐々木会長によると、改修工事には約2千万円を要した。市の助成金を差し引いても数百万円の支払いが必要。佐々木会長は「会館を井土ケ谷、南区のシンボルになるように力を貸してほしい」と寄付を呼び掛けている。問い合わせは佐々木会長【電話】045・741・3921。
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