4月8日に東京・両国国技館で行われたWBCタイトル戦で、五十嵐俊幸選手から世界フライ級王座を奪った元WBAミニマム級王者・八重樫東(あきら)選手(大橋ジム)。保土ケ谷中学出身の元世界王者・大橋秀行さんが会長を務めるジムのエース的存在が見据えているのは、あくまで目の前の試合。三十路を迎え円熟味を増す戦士は「現役でいる以上は高みを目指したい」と新たなスタートを切る。
全敗のライバルに完勝
五十嵐選手とはアマチュアだった高校時代に1回、大学時代には3回対戦し、いずれも敗戦。苦手の左利きという不利な要素も加わって挑んだ4月の世界戦だったが、アグレッシブな試合運びで12R判定ながら3―0の完勝。ライバルからタイトルを奪取した。
かつて最軽量のミニマム級(約48kg以下)だった八重樫選手の身長は160cmで、165cmを超える五十嵐選手とは体格差があった。「頭を上げずにくっついて連打しかない」。前半はポイントを取られても前に出て、中盤以降で取り返すプランだったが「8R時点のポイントで接戦か負けているかの想定だったので、リードしていたのは嬉しい誤算だった」と振り返る。
試合前の減量にも、勝敗を分けるポイントがあった。当日計量では、前日比で八重樫選手の4kg増に対し、五十嵐は7kgも増えていた。「相手は12、13kg落としたと聞いていた。減量が相当きつくて、体重が増え過ぎたのでは」。体力勝負なら有利だと直感した。
フライ級は世界でも強敵が多い階級だ。「勝利の達成感はその日のうちになくなる。瀬戸際で戦い続けることこそやりがい」。タイトルを守るという意識はなく、相手と同じ挑戦者の立場で戦うものと考えている。
次の試合も全力で
「明日はどうなっているか分からない世界」。週1日は完全休養に充てるなど、30歳を迎えて体への配慮も欠かさない。昨年6月に敗れたWBA世界ライトフライ級王者、井岡一翔選手との再戦については「対戦はあくまでも巡り合わせ。目の前の試合にぶつかるだけ」。次戦が決まるまで、やるべきことに全力を注ぐ。
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