地域にとって待望だった「バス路線」の開設に尽力した権太坂境木自治会の会長を務める 田中 久さん 境木本町在住 80歳
「思い立ったら即行動」
○…「地域が長らく待ち望んだ開通ですからね。多くの住民に利用してもらい、ぜひとも本格運行に移行できるようにしていきたいですね」。交通不便地域の主体的な取り組みを市がサポートする「地域交通サポート事業」を区内では初めて活用し、市営バスの試行運行が始まった権太坂境木地区の自治会長は「勝負カラー」だという赤色のネクタイに手をやりながら感慨深く話す。
○…台北に生まれ終戦から半年後、引き上げ船で両親の故郷・佐賀に移り住んだのが小学4年生の頃。「相続できるものは何もないが、学校だけは卒業させてやる」。役人だった父と高等女学校の教員だった母のもとで育った少年は大学進学を機に上京。住宅関連の会社に勤務し、仕事一辺倒だった30歳を過ぎたころ、後に妻となる10歳年下の女性と出会う。大学を休学しドイツに渡ったというその人の「度胸と行動力」に心奪われた。「初めて会ったのは9月8日、結婚したのは1月8日。私にとって『8』という数字は特別なんです」。80歳を迎えた今年は特別な年だった。
○…35年ほど前に新興住宅地だった境木本町に居を移す。自治会活動に携わるようになったのは12年前、翌春には会長に就いていた。「思い立ったら即行動」。この自身の行動機軸に従い会長として10年近く走り続け、世代交代が頭をかすめ始めた2年前、高齢化が進む坂の多いこの地域にとって待望となっていた「バス路線の開設」を集大成にしようと心に決め、行政に働きかけた。「動き出さなければ、何も始まらない」
○…スーツを着込み、ピシッとしたワイシャツにネクタイ姿。話し言葉には時より混じる横文字。身だしなみに気を遣う紳士的な姿が印象的だ。「今年の夏はドイツに行ってきたんです。妻へのお詫びを兼ねてね。私の活動を支えてもらっているから」。その手は無意識に赤いネクタイに触れていた。
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