東日本大震災を記した歌集を出版した 西津 貴美子さん 東寺尾中台在住 70歳
思い歌に、後世へ継ぐ
○…「被災地には行っていないの。私みたいな年寄りが行ってもね」。そう言って微笑む。短歌と長歌で綴った歌集「命つなぐ」。震災発生からの100日間をテレビの映像からインスピレーションで書いた171首。画面に映る被災者その一人ひとりを思い、言葉や背景を感じ、まとめた。「報道を見て、いてもたってもいられなかった」。筆を取った思いを語る。
○…実は個人で被災地支援も行っている。震災前、所属する製本ボランティア舞鶴のサークル展示の際、たまたま岩手県にも製本ボラがあることを知った。その伝手を頼り昨年、岩手県大槌町と山田町の小学校に本を送った。「舞鶴のメンバーが助けてくれるからできる。本当に友だちに恵まれている」と笑顔を見せる。今年から直接学校とやり取りし、夏休み前に発送した。「要望がある限り、今後も続けていきたい」
○…製本ボラはもちろん、生麦事件参考館の手伝いや単発で歴史の会の活動に参加するなど多忙の日々。和歌も含めて、「全部が趣味だから、出歩くのは苦にならない」と笑う。現在は2人暮らしとなる夫も、10前後のサークルに入会しているためお互いがそれぞれに楽しんでいるという。それでも「主人は私がいないと何一つできないから、ご飯も帰るまで待っているんですよ」と幸せそうにぼやく。
○…生まれも育ちも鶴見。女手一つで育ててくれた母は、人が集まると語り部のように関東大震災の話をした。「私を抱え戦争を越えた方が大変だったと思うのに、話すのは決まって震災の話だった。それだけ衝撃だったんでしょうね」。母と同じように衝撃を受けた東日本大震災。「語り部になるほど残された時間はないかもしれない」。13人の孫たちの10年後、20年後のため、出版を決意した。本の帯に、「許してな 言葉少なは 衝撃の 大き故にて 欠礼でなし」とある。思いを歌にし、後世に語り残す。
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