旧市場町出身の山本嘉子さん(74)が、同町での空襲体験をまとめた絵本をこのほど自費出版した。絵本には「愚かな戦争を起こしてはならない」という山本さんの反戦のメッセージがこめられている。
山本さんは、現在の市場大和町に生まれ、4歳ごろまで暮らしていたが、空襲で自宅が全焼し、東京都内の親戚の家へ身を寄せた。絵本「くものうえまで はないちもんめ」は、市場の家を焼け出された山本さんの体験をもとに、主人公が孫へ戦争の記憶を語り継ぐ設定で物語が進む。
「うえをみると、そらがまっか。ぱちぱち、しゅるしゅるしゅるーとはなびのようなおとがして、どかーんとなにかがおちました」(絵本抜粋)。空襲の夜、眠っていた山本さんは、気が付くと父親に背負われて火の中を逃げ惑っていた。友人は避難した防空壕に爆弾が落ち、家族と共に亡くなった。
「明け方、助かった人たちとおにぎりを食べて、ほっとした」と振り返る。空襲後は、親に手を引かれ、食料の調達などに朝から晩まで追われていた。
戦争わかりやすく
保育園に勤めていた山本さんは、子ども達にも戦争をわかりやすく伝えたいと出版した。「保育園時代から体験を子どもたちに語っていたこともあり、退職後何か形にして伝えたかった。子どもはもちろん、大人からその孫世代などにも読んでもらえたら」
絵本はチャンスがあれば鶴見図書館などにも置きたいという。「戦争は、人を殺し合い勝ち負けを決める野蛮なこと。愚かなことはやってはいけない」と山本さんは訴えている。
5百円。注文は電話又はFAXで山本さん【電話】042・426・9839、【携帯電話】080・5048・6684。
工業地帯・住宅が被災
横浜市の「神奈川県下の空襲被害状況」によると、1944年から45年の終戦までに鶴見は7回の空襲を受けている。
市場周辺の歴史に詳しい市場東中町の畑芳夫(75)さんは、「市場周辺は特に45年4月の被害が大きく、京急の線路から海側は工業地帯だけでなく住宅も焼かれた」という。
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