横浜市無形民俗文化財認定の生麦囃子保存会で会長として活躍する 八木下 努さん 生麦在住 40歳
体現続ける お囃子人生
○…葛西囃子を源流に下の手流儀を汲む生麦囃子。21歳の若さで5代目を継ぎ、約20年。江戸時代から続く伝統文化を先頭に立ち守る。重みは感じるが、プレッシャーより、楽しさが勝る。「正直、つらさはない。期待されればどこでもやりたい」。先日は地域のイベントで、18年ぶりとなる「天狐の舞」を披露した。実は、自身が踊る機会は珍しい。「教え子たちに『やっぱりすごい』と言われて、ほっとした」と笑う。
○…お囃子は祖父から教わった。2歳くらいで、おかめやひょっとこの面をかぶり、太鼓を叩いていた写真が残っている。小学校でも休みの日は笛や踊りの稽古に明け暮れ、友人とは少し違う生活。それでも、生麦に当たり前にあった文化。物心つく前から楽しさを覚えていた。体調不良で退いた先代を継いだときは、『若造にできるわけない』という反発もあった。「地域の人が、責任もつからお前やれって言ってくれて」。恩義を胸に活動を続ける。
○…自営の建設業で生計を立てる。神輿グループも作り、「毎年6月くらいからは、週末になると神輿か囃子か。休む暇がない」。充実した表情で愚痴をこぼす。日本舞踊などの踊り手集団・花柳社中に友人が在籍しており、観劇にもよく行く。「女形とかはためになる。良い動きは盗んでうちの踊りに加える」。趣味と実益を兼ねるだ。
○…会員は小中高生約20人を含め、30人ほど。生麦小学校に依頼し、授業で披露するなど、会員増強にも注力する。「文化財認定は更新が必要で、毎年活動を報告している。そこはこだわりたい」。継承するプライドを垣間見せる。「生麦囃子は人生かも」。体が動く限り、教え子たちにも負けるつもりはない。「まだライバル」というように、踊りを見せるのは1年に2度、夏と冬の稽古納めだけ。「叱るからには出来ないと」。味わいつくせない拍手喝采の高揚感。それを糧に、伝統文化を体現していく。
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