今年も防災週間(8月30日〜9月5日)中に区内各地区でさまざまな訓練が実施された。引いたカードの指示を次々とこなす、卓上型の避難所運営ゲーム「HUG訓練」のリアル版や地元中学生との連携のほか、学校全体で地域と取り組む小学校など、実際に備える訓練の様子を取材した。
避難所運営を実践
防災の日となった9月1日、寺尾小学校地域防災拠点では、避難所運営訓練となる「リアルHUGゲーム」が行われた。
HUGは、それぞれの状況を抱える避難者カードを引きながら、避難所に見立てた平面図に対応を落とし込んでいく運営訓練ゲーム。リアルHUGはその実践版で、今回、東寺尾地域ケアプラザが発案した。
当日は、地域住民ら約60人が避難者役で参加。拠点の運営委員には、事前に内容を知らせておらず、病気やケガ、障害者家族、ペット同行といった次々と来る避難者の誘導をメインに実践した。
途中、余震発生や支援物資到着などのイベントカードもはさみ、実際を想定。感染症患者を隔離させた部屋に別の避難者を誘導するなど、混乱する場面もあった。判断役を担った住民の一人は「個人の環境に配慮しながら瞬時に判断するのは難しい。考えていた分け方に該当しない場合もあり困った」と困惑した表情を見せていた。
避難者役として幼児を連れて訪れた母親は、誘導を待つ長い列を体験し、「子どもは我慢できない。食べ物やおもちゃの準備など、手ぶらでは来られないと感じた」と危機感を募らせる。
同拠点の運営委員長で荒立自治会の齋藤康治会長は「本当にいい勉強になった。反省して繰り返していきたい」と充実感をにじませていた。
江ヶ崎は中学生活躍
江ヶ崎町内会(黒川治宣会長)では3日、新鶴見小学校を拠点にした防災訓練を実施した。
訓練は20年近く前から行われており、今年は地域住民約500人が集まった。新鶴見小に避難するまでの流れや、簡易トイレの設置、リヤカーを使った人体搬送、バケツリレーなどの選択訓練もあった。
同町内会の訓練は、毎年、矢向中学校の生徒が協力し、要介護者の避難の支援をするのも特徴。今年は約30人の生徒が、要援護者の自宅に訪問しての安否確認や、近隣のグループホームから入居者を車イスやリヤカーに乗せて救助するなどした。
黒川会長は「中学生は日中通勤する大人と違い、災害時に地元にいる可能性が高い。実際に災害が起きた時、頼りになるはず」と中学生との連携の必要性を説明する。
また、昨年実施したペット同行避難も継続。区役所から借りる形だったペットのケージを今年は8台購入し、実際に7組のペット連れの受け入れを行い、ペットの避難所での様子などを確認した。
初の宿泊を企画
県立鶴見養護学校(藤本武校長)=駒岡=は今年、宿泊訓練という新たな試みに挑戦した。1日、初となる宿泊での避難所体験には、生徒やその家族、地域住民など約130人が参加した。
生徒や保護者の防災意識や教職員の運営力向上などを目的として、昨年初めて行った避難所体験をさらに発展させたいという思いから企画。当日は職員ら約50人と同校後援会、鶴見消防署、ヤマトホームコンビニエンス(株)などがボランティアとして協力した。
懐中電灯などの灯りのみの薄暗い体育館。参加者は段ボールでテーブルなどを作り、職員らが作ったカレーを囲んで食べた。宿泊希望者は、段ボールでベッドやパーテーションを作り、寝袋で夜を過ごした。
参加した小6の子どもの保護者は「寝静まった時、子どもがブツブツ言っていて迷惑だと思ったが、文句も出ずにありがたかった。しかし、理解のない所ではどうなってしまうか」と不安を口にした。
藤本校長は「同校は避難所には指定されていないが、実際に災害があった時、高齢者や障害を持った人たちが集まれる場所になれば」と話した。
鶴小、岸谷小は児童が実践
拠点が協力
鶴見小学校には、同小と鶴見中学校を拠点とする鶴見中央地区の住民らが協力。3日にあった同地区地域防災拠点の訓練と合わせ、当日を防災学習の日と位置付け、学年ごとに訓練などに取り組んだ。
同小が「児童も数年すれば防災の戦力。いざというときのために現場の体験を」との思いから地域に依頼。これまで学内だけの単発で開いていた防災訓練をまとめる形で企画した。
当日は、1、2年生がビデオ学習、3、4年生は鶴見消防署協力のもと、消防署の見学や煙体験などの教室、5年生はナイス(株)が持つ起震車体験を実施。6年生は住民らが運営する2つの拠点訓練に参加した。
住民らから「君たちは戦力だよ」と声をかけられ、積極的に訓練をこなす児童の姿も見られた。また、公開授業ということもあり、見学する保護者が一緒に煙体験などを行うケースもあったという。
訓練を終えた児童は「何かあったときは、ここで学んだことを生かして取り組みたい」とコメント。鶴見小の益田正子校長は「地域の協力に感謝している。少しずつ改善しながら継続できれば」とした。
体育館に一泊
6年生の児童が、保護者、学校、地域などと協力して実践するPTCA防災キャンプを行った岸谷小学校。最高学年としてリーダーシップを発揮し、積極的に役立とうとする姿勢と知識や技術の習得を目的に、毎年行っているものだ。
1、2日にあったキャンプでは、岸谷消防出張所を講師に、消火栓を使った放水訓練やAED(自動体外式除細動器)体験から、避難所の設営、HUG訓練などを実践。学援隊や中学生が避難者役として訪れる受付訓練もあり、来校者に炊き出しをふるまうなどもあった。
体育館に寝泊まりした児童からは「限られたスペースで硬い床に寝るのはつらい」などの感想があがり、実際の避難所の過酷さを学んでいた。
同校は、「何日も続く避難所生活や、心身ともに苦労することなど、あらためて実感することができた。2日間の体験を通し、自助、共助の大切さを学べた」と話した。
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