一年の稲作の所作を行う民俗芸能「鶴見の田祭り」の保存・伝承に努める鶴見田祭り保存会(池田昇会長)が、伝統芸能の継承や発展に貢献する個人・団体に贈られる伝統文化ポーラ賞の地域賞に選ばれた。115年という空白期間を経て復活させた経緯や努力などが評価された。伝統文化に対する表彰として、国内でも有数の権威を誇る賞に、関係者らは喜びの声とともに、継続・伝承の意欲を高める。
ポーラ賞は、工芸や芸能、地域の民族芸能などの伝統文化を継承・発展させている個人・団体を表彰することで、次世代につなぐことなどがねらい。37回目を数え、後に人間国宝となった受賞者もいる。
今年は、優秀賞2件、奨励賞1件、地域賞5件が受賞している。
国から廃絶命令
田祭りは、節に合わせて一年の稲作の所作を行う民俗芸能。西日本を中心に関東付近まで伝えられ、ほかに田遊び、御田祭りなどとも呼ばれる。年の初めに、豊穣を祈念する神事として各地で行われた。
鎌倉時代に伝わったとされる鶴見のものは、1872年(明治5年)に国による命令を受けて廃絶。原因は、鉄道開通にともない、線路沿いに建つ鶴見神社周辺にも欧米人が増えることが予測される中、当時の性教育を担い田祭りに登場する於鶴と亀蔵の演技が目に触れることを嫌ったためだという。
再興30年での快挙
今回の受賞は、115年の歳月を経て、見たことも演じたこともない祭りを復活させたことなどが、選考理由として挙げられた。
今年は1987年の再興から30年という節目の年。学生時代に鶴見の古老から祭りの存在を聞き、復活に尽力した金子元重宮司は、「格式高い賞を嬉しく思う。ようやく認められた気持ち。関係者が一丸となり、さらに継続したい」と話す。
24日に都内であった授賞式には、仕事の合間などを縫って演者12人が出演。ダイジェスト版の田祭りを披露し、拍手喝采を受けた。
再興当時から出演を続ける演者代表の遠藤一郎さんは「祭りごととして一生懸命やってきただけだが、見ていてくれる人はいるのだと感じた」と喜びを表す。
遠藤さんによると、解説や太鼓、子どもが担当する牛役など、総勢約30人を要する。近年は成り手の高齢化などが課題となっていたものの、20代〜50代の若手も加わり、次世代への土台も出来つつあるという。
「伝承は演者の力。それ無くして継続はできない」と演者を称える保存会の池田昇会長。「鶴見の伝統を知ってもらい、誇りを持ってもらうことが会の仕事。今回の受賞で大きな宝物ができた」と話した。
横浜市は26日、新たな市指定・登録文化財を発表し、きょう2日に、鶴見の田祭りが登録無形民俗文化財となることがわかった。
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