新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的に、政府による緊急事態宣言が発出されてから1カ月半、自主的に休業してきた店舗も、「生活のため」「未来のため」と再開する動きが見え始めている。誰もが経験なく、正解のない状況に、店主らの模索する日々がスタートしている。
売上8割減も我慢
鶴見中央にある寿司料理・鈴よし(鈴木吉太郎代表)は、5月18日に営業を再開した。休業したのは4月7日の宣言後、12日から。飲食店は時短営業の要請だったが、「年配の常連さんも多い。万が一、お客さんや従業員、その家族が感染したらと怖さがあった」として、安全面を理由に自主休業を決めた。当初は5月初旬の大型連休明けに再開する準備をしていたが、宣言とともに休業も延長を余儀なくされた。
自粛期間中、テイクアウトを始める飲食店が増え、周辺でも盛り上がる様子は知っていたが、「やはり生ものだから難しい。食中毒など、何かあったら」と考えた末に断念した。
座敷や個室を持つ鈴よしは、例年歓送迎会などある3月、4月は一年でも書き入れ時。コロナウイルスが広がり始めた3月から予約のキャンセルが続き、売上は前年比で8割減となった。
生活考え、共存の覚悟
それでも従業員7人、アルバイトも抱え、自分たちの生活もある。
「みんなの生活を考えたら、もう我慢できなかった」。緊急事態宣言が続く神奈川県内において、再開は苦渋の決断だった。
再開当日、ランチには20人ほどが来店。入口を開放し、消毒液を設置。席にも消毒用のタオルを置くなど対策をしながらのリスタートとなった。「有難いことに常連さんなどに来てもらっている」と謝意を示しながら、「コロナが終息しなければ、いつまでも続かない」と鈴木さん。閉めていても、開けていても厳しい状況だが、「やっていくしかない」。覚悟を決め、コロナと共存しながら我慢する日々を歩んでいく。
対象外も安全優先
「コロナ禍でも営業できる対策が準備できた」。そうした理由で再開した店舗もある。生麦にある理容店・ハッピーバーバーマツノ(松野洋一代表)だ。4月8日以降、自主休業に入り、5月20日、1カ月半ぶりに営業を再開した。
もともと、日本衛生管理協会の衛生管理講習を修了し、衛生面の対策は取ってきた同店。だが、HIVやB型肝炎などが主で、新型とされた今回のコロナウイルスは未知のものだった。同店3代目の松野良明さんは、「衛生管理をしているからこそ、勉強すればするほど、対応の難しさがわかった」と説明。業種として休業要請の対象外だったが、来店客、そして家族を守るため、自主的に休業を決断した。
対策を保健所にも確認
「未来のために耐えしのいだ1カ月」。4月は6日間のみの営業、5月も半分以上を休業し、売上は8割減った。それでも、この間、再開のための準備に奔走。「政府が(休業要請に)指定しなかったからといって、かからないわけじゃない」。飲食店よりも接客距離が近くなる分、高くなるリスクを少しでも減らしたい思いだった。
そして用意したのは、3台あるカット台を2台に制限し、来店者にはマスクを一枚配布。理容の専売特許となる顔剃りも当面の間、取りやめを決めた。スタッフは接客中、マスクにゴーグル、ゴム手袋を着用。2週間の自宅待機が必要となる濃厚接触者にならないように、保健所にも対策法を確認してもらう徹底ぶりだ。
再開を知らせた常連客からは、「待ってました」と喜びの声が寄せられたという。常連の一人は、「日常が少し戻ったようでホッとする。客としても、対策してもらえるのは安心」と話した。
「祖父の代から70年続いた伝統をこれからも守らないといけない」と松野さん。対策を積んでも見えざる敵のリスクはゼロにはならない。新たな営業様式は始まったばかりだ。
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