戦前に建てられた老舗銭湯が苦境に立たされている――。
「お客さんが減った。それでも、維持費はかかる。苦しいね」。寛政町の安善湯の平原逸雄店主(82)はつぶやいた。
新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下でも銭湯は、地域の公衆衛生の観点から営業継続が認められていた。安善湯も営業を続けたが、客足は減少。宣言解除後の今も変わらず、苦しい状況が続いている。
「今は各家庭にお風呂がある。前からそんなにお客さんが来るわけじゃなかったけど、それにしても少なくなった。人が集まる場所と、怖がって遠のいているんだと思う」と、店主は苦しい状況を吐露する。
薪で沸かす湯
平原店主によると、安善湯は1927年頃に創業。中心の丸い風呂を囲んで洗い場があるシンプルなつくりで薪を使って沸かす湯が特徴。薪は企業から出る廃材を使っているため取りに行く手間や時間はかかるが、油やガスで沸かすよりもコストがかからない。仕事終わり疲れを癒しに来る人や毎日通う常連もいる。
「この風呂のつくりは関西には多いが、こっちの方では珍しい。ネットで調べて遠くから来てくれる人もいるんだよ」と平原店主。銭湯を語る表情は柔らかい。
「なくならないで」
消毒や換気を今まで以上に徹底し、大きな声での会話やグループでの来店を規制するなど、感染症対策をしながら営業を続ける。「今までなかった仕事が増えちゃって大変だよ」と平原店主。
銭湯によく通う近隣住民は、「文化財みたいな建物に、銭湯好きだったら唸る立派な絵。なくなってほしくない」と切に願う。
「少しずつ落ち着いて、客足が戻ってきてくれるといい」。強く信じながら、今日も熱い湯を沸かす。
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