5月3日は「憲法記念日」。本紙では4月1日に横浜弁護士会の会長に就任した小野毅さん(55)に、市民と憲法との関係や横浜の現状に即した基本的人権の状況、憲法改正問題などについて話を聞いた。
憲法は国民との契約
小野会長は、憲法について「国民と国との『契約』と考えると分かりやすい」と説明する。憲法は、基本的人権など国民の侵してはならない権利を定めており、国は、国民から権限を付託された統治機構として国民の権利を守らなければならないと指摘した。
基本的人権の一つである生存権。その権利の一部として考えられている生活保護の受給者は、横浜市内で約7万人におよぶ。給付のハードルが上がると言われている法改正(7月施行)については、「単に受給者を減らすことで本当によいのか」と疑問符をつける。「なぜ生活保護が必要なのか、そこに手をつけなければ根本的な解決にならない」と話し、養育費受取りや過払金返還を実現することで生活保護受給を防いだ例を挙げ、法律家が福祉の現場とより緊密に連携する必要性を訴えた。
外国人の人権保護も大きな課題だ。横浜市370万人のうち、2%に相当する約7・5万人が外国人。
小野会長は憲法のいくつかの条文を示しながら、その書き出しについて「すべて国民は」と「何人も」とを書き分けていると説明。信教など個人の自由の権利に関する条文は、後者で始まるものが多いとして、日本人でなくても一定の人権は保障されるとした。
市内で年間2千件超が確認されている児童虐待、全国的にも増加傾向にあり深刻な問題だ。この状況について小野会長は「ここ10年でやっと表に出てきた」と話す。「家庭内暴力=犯罪」という認識が広がることで、被害者が声を上げやすくなり、「社会全体で被害者を救おうという環境が整いつつある」と指摘した。
雇用環境悪化に警鐘
1次から3次産業まで、162万人が働く横浜市。非正規雇用の関連法改正の動きについても警鐘を鳴らす。非正規雇用の最長期間が5年から10年に延長されることに対し、「10年のプロジェクトはあまりない。働く側に何のメリットがあるのか。雇用が増えると言うが、10年後に正規雇用されるとは限らない」と指摘し、「正規雇用を外すためのものでしかない」と批判した。
最後に「危急の課題」と語ったのが、集団的自衛権をめぐる現政権の解釈改憲の動きだ。「改憲するならば、正々堂々と議論しよう。それが民主主義ではないか」と強調。解釈改憲は、法の精神を尊重する『法の支配』に反すると強くけん制した。憲法改正の手続きを定めた96条改正論についても「誰でもわかる小手先の話だ」として、正当性を否定した。
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