川崎市内の拠点病院と市薬剤師会が、事前合意した範囲であれば薬剤師の判断で一部の処方変更ができる「院外処方疑義照会プロトコール」の運用を4月から開始した。患者の待ち時間短縮や医師の負担軽減が目的で、自治体全域での運用は前例のない規模だという。
疑義照会とは、薬剤師が処方箋の疑問や不明点を発行した医師に問い合わせること。薬局で散剤(粉薬)が苦手な患者に同じ成分の錠剤に変更する場合など、いわゆる「形式的な疑義照会」にも医師への確認が必要になる。
「疑義照会プロトコール」では、事前に決めた範囲の変更については疑義照会を省き、薬剤師の判断で可能になった。市薬剤師会は「疑義照会は医薬品の適正使用のため重要だが、患者の待ち時間が延びたり、病院によっては1日100件を超える疑義照会への回答が医師の負担にもなっている」と指摘する。
15病院、303薬局が参加
医師と患者の負担を軽減しようと、京都大学病院が2013年に国内で導入したのが始まり。その後各地で広がっているが、複数の医療機関と市薬剤師会が共同運用するのは全国でも初という。
今回の取り組みは、昨春に聖マリアンナ医科大学病院(宮前区)が市薬剤師会に働きかけたことがきっかけ。5月23日現在で市内15カ所の医療機関と、市薬剤師会加盟の303薬局が参加。合意事項は6項目で、同一成分の銘柄変更や内服薬の剤形変更のほか、半割・粉砕・混合、医療上の必要性が認められる一包化などが盛り込まれている。
運用開始から1カ月が経ち、現場の医師からは「疑義照会の件数が減り、診療に充てられる時間が増えた」との声もある。聖マリアンナ医科大学病院薬剤部の田中恒明部長は「市外からの患者さんのためにも市境にも広げられたら」とコメント。市薬剤師会の嶋元会長は「薬剤師一人ひとりが責任感をもって適切な運用を心掛け、患者さんの利便性向上に寄与したい」と展望を語る。
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