地域の子どもたちに本の貸し出しやイベントを開催している「いぬくら子ども文庫」=犬蔵1の32の17。主宰者の渡部康夫さん(68)が本の紹介などのために2011年10月から発行している「いぬくら文庫だより」が今年6月に100号目を迎えた。
犬蔵の閑静な住宅街の中にある「いぬくら子ども文庫」。渡部康夫さんが「子どもたちに主体的に読書を楽しんでもらいたい」と自宅の1階を開放しボランティアで運営している私設の文庫だ。
ぎっしり1万冊
蔵書は児童書を中心に約1万冊。2011年12月の開設から8年間で2000冊増え、1階の図書スペースは、色とりどりの本がぎっしり並ぶ。
「いぬくら文庫だより」は、渡部さんが編集し、基本月1回のペースで定期的に発行している刊行物だ。子ども向けに新しい本を紹介し、これまでに登場した本は1000冊以上になる。文庫開設前の11年10月から発行を続け、今年6月に100号に到達した。
文庫は毎週水曜日(午後2時〜4時半)が本の貸し出し日となっている。この日は子どもたちが自由に出入りし、好きな本を借りて帰る。貸し出し冊数の制限は設けられていない。期限は2週間だが、何冊でも借りることができる。
現在、利用登録者は300人ほど。小学生を中心に就学前の児童、中学生の利用者もいる。1日平均20人の利用があるという。読書の記録として「読書通帳」という仕組みも用意した。読んだページ数を記録。状況に応じて賞状やカードをプレゼントしている。
本の貸し出しだけでなく、本に関係するイベントや読み聞かせをする「おはなし会」も同文庫の看板行事だ。
渡部さんは、元小学校の教員。定年の11年3月まで川崎市内5つの小学校で教員を務めた。最後の職場は白幡台小学校だった。初めて教壇に上った生田小2年生のクラスで「本の持つ力」を目の当たりにしたという。
教室内で騒ぐ児童たち。その時一人の女子児童から1冊の本が紹介された。「この本を読むと、みんな静かになるよ」。タイトルは『おしいれのぼうけん』。読み聞かせると騒がしい教室が「シーン」と静かになった。
その後、渡部さんは学校図書館司書教諭を務める。学校図書館協議会では役員となり、学校図書の取り組みに尽力した。
心の空腹を満たす場
山ほどある本を地域に還元したい―。退職後、自宅を活用して文庫を開くことを決めた。
「図書館で子どもに関わり、深く物を知る、感動する、子どもにはそういう場所が必要だと感じていた。目には見えないけれど、子どもたちの心は飢えている。心の空腹感、心の貧しさを満たしてあげる場所にしたい。私には本がある。場所がある。お金はないけれど。できることをやって子育ての場になれば」。渡部さんは優しく笑った。
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