昨年10月の台風19号で浸水被害を受けた川崎市市民ミュージアムの収蔵品約23万点が6月末、搬出を終えた。今後も洗浄やカビ取りなど修復作業は続くため、開館の目途はいまだ立たない。
市は当初、被災した収蔵品の搬出について今年3月末までの完了を目指していたが、作業の遅れやコロナの影響により6月末にずれ込んだ。緊急事態宣言が発令された4月以降の作業は美術品の洗浄など専門的な作業を依頼した外部団体が応援に来られず、作業はより難航していた。作業が3カ月遅れたことに対して市担当者は「年度内というのはあくまで目安だった。圧倒的な数の収蔵品に対して慎重に作業したことで予定より遅くなった」と分析する。現在、修復が行われたのは数点のみ。国や県指定の重要文化財などから優先的に取りかかっている。
状態が悪いものは修復が難しい場合もある。日本画家の大矢紀さんが市に寄贈した30点以上の作品も保管されていた。「私の作品で修復できそうなのは7点のみと言われた。作品は子どものようなものなので簡単には捨てられない。少しずつ引き取って自分で修復している」と話す。
休館が続く同館に対し、修復済みや被害のない美術品を使って展示会を開いてはという市議会議員の声もあるが、市担当者は「今は収蔵品を助けだすことで手一杯」と難色を示す。開館についても「ミュージアムの建物自体、修理するのか移転するのかもこれから話し合いを進めていくところ」とし、再開のめどは立っていない。
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