東日本大震災の際、津波や原発事故で多くの人が避難を余儀なくされた。宮前区には当時40世帯ほどの被災者が、区内にある公務員宿舎などに避難した。10年が経ち故郷に戻る人だけではなく、宮前区内で暮らす人もいる。本紙は現在も宮前区にいる避難者にインタビューを行い、思いを聞いた。
1人目は宮城県石巻市から避難してきた溝渕嘉則さん。津波に家を流され、知り合いを頼り宮前区に避難してきた。あの日から10年が経ち、「長いようで短かった。けれど、地域にたくさん面倒を見てもらってありがたかった」と率直な今の思いを語る。
溝渕さんは、石巻の友だちから復興イベントに参加しないかと声をかけられたという。ただ、80歳と高齢で宮前と石巻を行き来するのも難しく、今年の3月11日は家で黙とうを捧げ過ごした。「もう戻らないと思うよ。故郷に戻ることをやめた人は多い」という。それでも「これからは宮前の人を支えたい」と前を向く。
2人目は福島県大熊町から避難した長坂幸信さん。「あっという間だった」と、この10年を振り返る。3月11日はいつもと変わらず過ごした。しかし、今も津波の映像は見られないという。避難してきてからは、宮崎台で行われていた避難者を支援する「ひまわりサロン」の取り組みに救われてきた。「知らない土地でも孤独を感じなかった。地域に支えられて生きていると実感できた」と宮前への感謝を語る。長坂さんは現在、高津区に家を建てて暮らす。「もう戻らないと決めた。貰ったやさしさを恩返しできれば」と新天地での決意を新たにした。
故郷に戻らなかった2人だが、今でも震災を忘れたことはない。思いを滲ませながら「震災を忘れないことが大事なんだ」と力強く語った。
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