川崎市平和館(中原区)で3月6日、76年前の川崎大空襲を体験した梅津政之輔さん(90)の講演が行われた。同館で開催中の「川崎大空襲記録展」の企画として、東橘中学校(高津区)の3年生や一般参加者らと平和について理解を深めた。
梅津さんは11歳で初めて空襲を体験。当初は「恐怖心よりも好奇心が強かった」といい、警報のサイレンが鳴っていても避難せずに戦闘機を眺めていたこともあった。しかし、連射しながら接近してくる戦闘機に慌てて防空壕に飛び込んで命拾いした経験から恐ろしさを痛感。空襲後、鶴見川に流れる女性や道に倒れる黒焦げの遺体など、目の当たりにした数々の悲惨な光景について語った。
終戦直後、父親に「戦後の東京を見ておけ」と促され、疎開先の山形県から足を運んだ。地下道に身を寄せる大勢の被災者や物乞いする軍人など「当時の光景は今も忘れられない」と話す。川崎駅周辺は焼け野原で「何もかもなくなっていた。現在の姿を見ると、良くここまで復興したと驚きを隠せない」と話した。
講演後は参加者らから質問が寄せられた。当時の食生活について問われ「芋しか食べられなかった。今でも食卓に並ぶとあの頃を思い出して嫌な気持ちになってしまう」と答えた。
平和学習を発表
東橘中の生徒らは3年間の平和学習のまとめとして、修学旅行で広島県を訪れて実感した戦争の恐ろしさや、いじめや差別など現代の問題から考える平和について発表した。男子生徒は「今も世界から戦争はなくなっていない。未来を担う者として平和について考え続けたい」と願いを込めた。発表を聞いた梅津さんは「身近な問題から平和について考えられていて、素晴らしい発表だった」と賛辞を送った。
展示会は5月5日まで開催。問い合わせは同館【電話】044・433・0171へ。
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