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2度の魚雷攻撃から帰還 冊子で残る戦争体験

社会

掲載号:2021年7月30日号

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入営の日の写真も掲載された冊子
入営の日の写真も掲載された冊子

 戦争の記憶を語れる人が減りつつある中、馬絹在住の田邉英夫さん(88)が「見てくれ」と記者に渡してくれた冊子には、戦争の体験が語られていた。田邊さんがJA理事を一緒に務めていた時に、高津区で農家を営む黒川金次さん(98)から託されたものだ。

生死の境 くぐり抜け

 同書によると黒川さんは1943年12月、21歳で入隊。東シナ海のバシー海峡に出た際、敵の潜水艦の攻撃に遭い、乗っていた輸送船「ブラジル丸」に魚雷が2発命中した。3分40秒で撃沈し、3100人の乗船者のうち救助者はわずか407人。「気がつくとハッチのふたにつかまって浮いていた」という黒川さんは、駆逐艦によって救助された。

 二度目の魚雷攻撃は4カ月後。マニラを出発しセレベス海に出た時のことだった。すぐには沈まないからあわてないようにとの号令後「何も持たずに飛び降りろ」と指示が出た。黒川さんは船に積んであった孟宗竹につかまり、二日二晩浮いていたという。仲間と励まし合って耐えていたが、夜になり眠ってしまった人は二度と浮いてこず、寝てはいけないと必死だった。父のリヤカーの後押し、母の実家の祭りに連れて行ってもらったこと、下宿先の近所に住む娘さんのことなど、漂流中はとめどなくいろいろなことを思い出していたという。

 冊子にはほかにも、厳しかった軍律や衛兵勤務の経験、上陸したセレベス島での日常生活などが綴られている。

若い青年の記憶を形に

 黒川さんが町会の副会長を務めていた15年ほど前、理事会のあいさつなどで度々語っていた戦時中の経験を、当時会長だった吉田豊さん(88)が「詳しく聞きたい」と、吉田さんが願い出て、冊子にすることを提案。黒川さんが語る言葉を吉田さんが記述していった。回を重ねるごとに記憶がよみがえり、冊子が完成したのは1年後の07年1月。冊子を『いのちの記憶〜私の戦争体験』と名付けた。黒川さんは「3分40秒で生まれ変わって帰って来たよ」と語る。

 「21、2歳の若い青年が経験した、気取りのない本当の話を正直に語ってくれた」と吉田さん。「九死に一生というが二生。金次さんの努力なのか運なのか、戦争のさなかでも1人も殺していない。こういう兵隊さんもいた、という記録になれば」 

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