洗足音大 学生が支援、1年間の奮闘 被災地で演奏会、楽器寄贈も
東北地方を中心に甚大な被害が広がった東日本大震災から1年。洗足学園音楽大学は音楽の力で被災者の心を支えたいと、発生後すぐに「被災地支援推進チーム」を結成し、復興活動を続けてきた。被災地での演奏会開催などに取り組む有志たちは、今後も音楽を通じた支援活動を継続したいと話している。
「被災地のために自分にできることを考えよう」「音楽大学だからこそできる支援とは何か」。震災から約1ヵ月後の昨年4月、同大学、大学院、短大の教員、学生らによる支援チームが発足した。参加の呼び掛けに応じ、次第に集った有志約50人が現在も復興活動に奮闘している。
主な活動は募金、楽器の寄贈のほか、被災地でのチャリティーコンサートの開催。地道に続けた募金の結果、現在までに600万円を超える義援金をあしなが育英会、日本赤十字社、福島県いわき市に寄付した。「未来の音楽家たち」による復興への取り組みが着実に成果を上げている。
音楽に不思議な力が宿る
支援推進チームは昨年8月14日、宮城県黒川郡で追悼演奏会を開催した。同大学の東北出身学生と宮城県内の中高生総勢100人が共演。観客約400人を前に哀悼の意を音色に込めた。
引率した岩本伸一准教授は、ベルギーから訪日してこの日の指揮者を務めたヤン・ヴァン=デル=ローストさんの言葉を胸に大切にしまっている。「音楽は手では触れない。でも心に触れることができる」。終盤に近づくにつれ、聴衆の拍手が段々と盛大になり「自分も自然と泣けてきた」と岩本准教授。「何か不思議な力を感じた」
「他人事に思えなかった」
「家が崩れ、骨組みだけが残っていた。テレビのニュースで見るより衝撃的だった」。同大学大学院2年の加藤詩菜(うたな)さんは昨年5月14日、支援チームの一員として被災地・千葉県旭市を訪問。現地に広がっていた「生々しい景色」に息を呑んだ。「目の当たりにすると、とても他人事には思えなかった」
同市にある避難所から演奏依頼を受けたのは訪問の3日前だった。加藤さんら学生計6人は慰問演奏会開催を快諾。移動中のバス内で初リハーサルを開始するほどの強行日程だったが「なんとかしなきゃ」と心を一つにした。被災者たちからの歓迎を受けた学生たち。スティールパンやパーカッションで聴衆の心をつかみ、避難所にいる全員で「ふるさと」を大合唱した。「情熱を傾けられる特別な演奏会だった」と加藤さんは追憶する。
学生有志を引率する石井喜久子准教授は「(こうした経験を通じ)皆成長したと思う。これからも続けていきたい」と抱負を語った。
同大学は昨年4月、全学生が学年を越え、グループ別にホームルーム形式で震災について話し合う「希望と絆」週間を初めて実施。学生らは2週間に渡り、教員とともに「復興のために自分にできること」を考え、意見をぶつけ合うなど、貴重な時間を共有した。同大学は来年度も、復興支援に向けたこれらの取り組みを継続していくとしている。
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4月26日