高津物語 連載第九七七回 新春雑感
我が家は通りに面しているので、毎朝の道路掃除は欠かせない。
その時に、いつもお会いする方が八十代後半と思われる男性で、杖をついて一歩一歩ゆっくりと歩いて来られる。
何日目の朝だったか、その方と私の両方で、自然に「おはようございます」と声を掛け合うようになった。
どちらにお住まいなのか早朝の決まった時間なので私同様、早起きが日課になっているのだろう。
人って何気ない挨拶や言葉で、心が和(なご)むものだ。
先日横浜に出かけた帰りタクシーを探そうと右往左往していた。
車の往来は絶えなかったが、駅から遠かった為、なかなか空車がこなかった。
諦めかけていた頃、一台のタクシーがスーッと止まってくれた。
ホッとして乗り込んだ時運転手さんが「ずっとお待ちになっていたでしょう。お客様のこと、見つけられなくてすみません」とまるで自分が悪いかのように言って「私は川嶋と申します。どうぞよろしく」と名告られた。
運転手さんから、こんな丁寧な挨拶を頂いたことがなかったので、恐縮し嬉しくなった。
嬉しい事があると、その日一日中幸せな気分になる。
老老の身となってしまった今は尚更のことである。
早速、息子に「嬉しかった事のお裾分けね」と伝えると、自分も、保育園の前を通っている時、柵込しにボールが転がってきたので取ってあげたら「ありがとう。あなたは、おじさんですか?」と言われ「見た目はおじさんですが、心はお兄さんです」と答えると、にっこり笑ったそうだ。
「あんなにいい笑顔見たの久し振りだよ」と嬉しそうに話してくれた。
夕方、何気なく屋上に出てみたら、夕焼けが空一杯に広がっていた。
「なんて美しいのだろう」思いがけず嬉しいご褒美を頂いた。
見事な夕景の中で、まだ頑張れるぞ、と思った。
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3月29日