手渡し詐欺 被害多発 1日5千万円も 多摩署速やかに公表せず
4日に集中 その後も相次ぐ
多摩区内で今月4日、「手渡し型」詐欺が7件発生し、被害総額5077万円にも上ることがわかった。事件発生から13日経った今月17日、本紙の取材に対して多摩警察署が初めて明らかにした。公表前の11日と14日にも区内で2件、総額690万円の被害があったこともわかった。一連の対応については「被害拡大を防ぐため、速やかに公表すべきだった」という指摘もあり、公表が遅れた多摩署の姿勢が問われそうだ。
多摩署(三留秀樹署長)によると、4日に発生した詐欺の被害者は区内の60代から80代の女性7人。被害額は300万円から最高で2200万円。この日だけで総額5077万円の被害があった。
犯行手口は、4日の午前8時30分から午後2時30分の間に各被害者宅に家族を装った電話をかけ、「会社の金を使い込んで浄水器の販売を始めた。会社の監査がある」「会社の決算を不正に記録した」といった相談を持ちかけて金銭を要求したというもの。会話の途中に「生命保険の書類は届いたか」などと詐欺の疑いから気をそらすような巧妙な話術を取り入れているのが特徴という。
金銭の受け渡しは、いずれも会社の同僚や郵便局員などと名乗る男が同日中に被害者宅前の路上や玄関先に訪れ、直接現金を受け取るケースだった。
11日も似た手口
振り込め詐欺など不特定多数の一般市民が狙われるこうした事件については、各警察署や県警が発生直後に報道機関に公表するケースが多い。ただ、4日の事件に関して多摩署は報道機関への公表を差し控えてきた経緯がある。
公表前の今月11日には、80代の女性宅に孫を装ったらから電話があり600万円を騙し取られる被害があった。4日と同様、被害者宅に男が現れて直接現金を受け取る手口だった。
14日の被害者は50代の女性で被害額は90万円。銀行から振り振り込ませるケースだった。
速やかに公表しなかった理由について多摩署は「捜査している最中の混乱で公表できなかった。検挙することを優先した」とコメントした。
多摩署では対策として高齢者を中心にチラシを配布し、「家庭電話の留守番電話対応」や「相手が確認できる携帯電話の利用」を呼びかける方針という。被害が集中した今回の事態を「高齢者が1人でいるケースを狙った犯行。振り込みではなく、手渡し型だったため、被害者は詐欺と疑わなかったのではないか」と分析している。
専門家「早く公表すべき」
言論法・ジャーナリズム論が専門で事件報道に詳しい山田健太・専修大学准教授は「警察情報のうち、捜査に支障が生じるなどの理由で公開しなくてもよい場合があるとされている。ただし、原則は公開であって、例外を一般化することは許されない。 しかも、既に被害が起きていて再犯の恐れがあるときは早い段階で公表し、市民に周知すべき。捜査中で公表できないという理由であれば、どんな事件も発表されないままになる。警察側の不都合や失態を隠すための言い訳に使われかねない」と指摘する。
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4月5日