多摩区をはじめ川崎市域を流れる二ヶ領用水の文化財登録に向け、市は今月、文化庁に意見書を提出する。「文化的価値を高めて後世に残すために、市民と一体で調整を進める」と市担当者。12月の文化審議会を経て、来年3月に登録される見通しだ。
文化財登録制度は1996年の文化財保護法改正で設けられ、案内板設置等の広報に対し、国の補助金が受けられることなどが特徴。市内では二ヶ領用水久地円筒分水や禅寺丸柿が登録されており、今回で5件目になる。
多摩川下流域の治水と新田開発のため、国内有数の農業用水として約14年かけて1611(慶長16)年に完成した二ヶ領用水。多摩区内の上河原と宿河原の2カ所から取水し、ほぼ市全域に生活水をもたらしてきた。今回の登録対象は全長約18キロの二ヶ領用水のうち、市が管理する「上河原線」「宿河原線」「円筒分水下流」の3区間で、合計約12・4キロにのぼる。
自然環境や景観に配慮した遊歩道など整備が進み、市民団体によるイベントや桜の植樹、保全などの活動が地元で広がっている。「よりよい形で効果的に保全し、伝承できるよう地元住民と協議を重ねる」と市担当者。今後は「二ヶ領用水宿河原堀を愛する会」など市内の関連団体との意見交換を予定している。
歌広める活動も
二ヶ領用水を題材にした合唱曲として、歌い継がれてきた作品がある。用水竣工400年を記念し、中原区文化協会参加作品として2011年に作られた『水の旋律(メロディー)〜二ヶ領用水のうた』だ。楽曲の普及活動を続ける枡形のデュオ「J&S陽だまりコンサート」の小川聖子(せつこ)さん(指揮)、河野順さん(ピアノ)は男女混声合唱団を多数指導し、市内を中心に歌を披露してきた。
小川さんは「歌を通じて、多くの人に二ヶ領用水を身近に感じてもらえるよう活動ができれば」と話す。今後も秋恒例のプラチナ音楽祭(ミューザ川崎)や、10月の多摩区民祭「コーラスの集い」(多摩市民館)などに出演する予定だ。
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