2021年の幕開けにあたり、本紙は福田紀彦川崎市長に恒例の新春インタビューを行った。脱炭素やSDGsなど今後の戦略を示すとともに、感染症対策や自然災害への取り組みなど喫緊の課題について考えを語った。(聞き手/本紙川崎支社長・有賀友彦)
――昨年は先が見通せない激動の一年だったと思いますが、手応えがあった部分と反省すべき点をお聞かせください。
「2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロに向け、脱炭素戦略『かわさきカーボンゼロチャレンジ2050』を掲げられたのは大きな成果だと思います。気候変動は差し迫った課題で、地球規模の環境問題に市民の皆さんと取り組みを加速させていきます。反省すべきは、市職員の不祥事が相次いだ点です。社会が不安定な時期だけに、気を引き締めなくてはなりません」
――市役所にコンプライアンス推進室が設置され、市長から公務員倫理に関する通達も出されたばかりでした。
「職員一人ひとりの行動や一つのミスが、市民の信頼を失い市のイメージを損なうことを、引き続き指導や研修で伝え、再発防止に努めます」
――新型コロナ対策では、医療関連以外に自然災害への備えという側面でも課題が多かったと思います。
「一昨年の台風被害を踏まえた避難所開設訓練に、感染症対策も加えました。ただ、風水害や地震など災害により対応は異なり、実際の運用面での課題も残っています。逃げ遅れを防ぐための『マイタイムライン』(避難行動計画)の活用も含め、市民の皆さんに周知しきれていないのも現状です。自らの命は自ら守る行動につなげていかなければなりません。昨年の総合防災訓練は規模を縮小し非公開で行いましたが、自衛隊や警察、消防と、行政の連携は強化され、内容や質も向上しています。しかし、防災対策に終わりはありませんので継続して取り組みます」
――経済対策の一つとして「川崎じもと応援券」を発行されました。手応えはいかがですか。
「コロナ禍で経済的に厳しい地元の中小事業者を下支えし消費を喚起する目的で、総額約113億円もの大きな経済対策を敢行しました。波及効果も出てきて、大いに成功したと感じています。事業者の方からの喜びの声も多く、利用期間の3月まで期待しています」
――2021年をどのような年にしたいか、展望をお聞かせください。
「東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。市が目指してきた、障害の有無等にかかわらずお互い尊重しあい共生していく『パラムーブメント』の大きな節目で、飛躍の年にしたいと考えます。コロナ収束のためには、ワクチン接種が最優先課題です。150万人超の市民への接種となると行政対応が重要になりますが、医療団体などと緊密に連携しスムーズに進められるよう準備します」
――「SDGs未来都市かわさき」では、市独自の登録・認証制度も予定されています。どのようなビジョンを描かれていますか。
「SDGs認証制度」年度内に
「SDGsに関する具体的な動きが、大企業だけでなく学校や地域にも広がっています。今までつながりがなかった企業や団体が、SDGsの目標においてはパートナーになったり、理念よりも何をすべきか考え実行する段階に進んできました。今年度中にSDGs登録・認証制度を発表する予定ですが、企業が資金調達しやすくなる、市民団体が活動しやすくなるなどの利点がある制度設計を考えています」
――今年のテーマを教えてください。
「フランスの経済学者ジャック・アタリ氏が唱える『利他』です。他人のために取り組むことが結果的に自分のためになるという考え方です。例えば、他人にマスクを配れば自分も感染を防げるというように。自分が大変な時こそ、まずは相手のことを思いやる。つまり、利他は究極の合理的な利己主義であり、この精神が広がれば今年は良い年になると思います」
100周年へ機運高め
――2024年には市制100周年を迎えますが、どのような準備を考えていますか。
「川崎が大切にしてきた多様性という価値を市民が誇りに思える100年、その先も皆で考えていきたいですね。日本は物質的な成長はしましたが、これからは人の幸せの在り方が求められます。100周年に向け、地域のつながりや人との交流を少しずつ深めていく必要があります。イベントは未定ですが、単に行政の節目とならないよう市民の皆さんと機運を高めていきたいですね」
――今年は市長選も控えています。掲げられている公約の達成度と自己採点、3期目に向けた展望をお聞かせください。
「公約はおおむね順調に進められていると思いますが、点数は皆さんにご評価いただくものだと考えています。1カ月先すら見通せない中、当面は目先の市民生活を守り、地域経済を支える施策に真剣に取り組まなければ、まさに命にかかわります。コロナ患者の病床確保も然り、迫りくる危機にどう対策を講じるかが重要です」
――リーグ優勝した川崎フロンターレや、B1・川崎ブレイブサンダースが川崎市を盛り上げ、新拠点の計画も進んでいます。
「このような状況下で、市のスポーツパートナーの活躍や地域への貢献が川崎のまちを明るく元気にしているのは間違いありません。この魅力を発展させ、市外から多くの人が訪れる街づくりにも努めていきます」
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