市政報告 資源物の持ち去り禁止条例川崎市の対応方針(案)について 川崎市議会議員 松原しげふみ
地方自治(市政)は市民の皆様の一番近い所にありながら、政治と言えば市政よりも国政の情報に関心が向きがちであります。マスコミ等での国政に関する報道に比べ、市政に関しての報道は少なく話題も限られているので市政への関心はそれ程高いものではありません。喫緊の最重要課題は新型コロナウイルス感染症対策でありますが、恒常的な課題として行財政改革や教育改革、経済福祉対策等、取り組むべき課題は山積であります。
私はこれらの改革、対策を進める上でも、車の両輪のように重要課題と感じているのは「まちづくり」と「環境」であります。戦後、経済成長をする中、川崎市は「公害」という厳しい現実を経験しましたが、本市では国に先駆けて「公害防止条例」を制定し、大気汚染対策に取り組み公害を克服してきました。環境問題に関して川崎市は全世界のトップランナーの一国となっています。さらに、廃棄物行政(ごみ問題)にも積極的な取り組みが行われています。かつて(今から約30年前)川崎市は週に6日のごみ収集が行われていました。市民にとっては有意義でありましたが、人口増加に伴いごみ排出量の増加や焼却処分場の埋め立てが限界に近く、やむを得ず川崎市は市民や企業等に向け「ごみ非常事態宣言」を発し、ごみ対策に取り組みました。市民の皆様の協力や廃棄物減量指導員の方々の活動のおかげで減量化や分別に取り組み、今日のごみ行政へと至っています。その結果、平成29年には全政令市の中で一人当たりのごみ排出量が最も少ない都市になる事ができました。また、河川の水質に於いても多摩川にはアユが戻って来るようになり、大気についても改善がみられ、市民一人ひとりの環境意識の高まりを感じています。
しかし、一点残念ではありますが、ごみ集積所や資源集団回収場所から家庭系廃棄物の持ち去り行為が発生するようになりました。持ち去りについてはこれまでも生活環境事業所でパトロールを実施したり、集積所へポスター等を掲示するなど対策を進めてきましたが、現行の取り組みや対策では対応が困難となる事が想定されると市は判断し、今回「資源物等の持ち去り対応方針(案)」として4つの基本的な方向性がまとめられました。一つ目は、循環型社会の構築に寄与し、自治体として廃棄物処理の責務を果たし、市民の安全安心なごみ出し環境を確保する。2つ目は規制対象品目について市民にわかりやすくすると共に、広く市民の遺失利益を確保するものを対象とする。3つ目は「廃棄物の処理及び再生利用に関する条例」を改正し、罰則及び両罰規定を設け、抑止効果や実効性のある条例とする。4つ目は、悪質かつ組織的な持ち去りに対しては改正条例に基づき行政指導や禁止命令等の対応を行う。またホームレス等の生活弱者に対しては、健康福祉局と連携し自立に向けた支援につなげるなど必要な取り組みを実施する、という4つの基本的な方向性になっています。
全体的な方向性については理解するところですが、3つ目の「罰則」については、条例施行前に周知を行った上で罰則適用を行う予定としていますが、その内容によっては今後議論が分かれるのではないでしょうか。いずれにいたしましても、令和3年2月12日〜3月15日の間にパブリックコメントが実施され、4月にはパブリックコメントの意見がまとめられ環境委員会へ報告が行われます。5月以後約3カ月間検察との協議が行われ、9月以後条例改正に係わる手続きが開始される予定となっています。
私はこの問題解決のため平成18年から取り組みを進めてきましたが、ようやく課題解決の具体的な内容と方向性がまとまりました。令和元年にバーゼル条約の規制対象に廃プラスチック類が追加されるなど、廃棄物の適正処理についてはその機運は世界的に高まっています。市内で排出される家庭系の廃棄物が適正に処理される事はもとより、自治体が廃棄物の処理責任が果たせる実効性のある条例となるように、引き続き市民の皆様のより一層のご協力を願っております。
松原しげふみ事務所
中原区新城5-2-3
TEL:044-751-8855
|
|
|
|
|
|
3月15日