材木を削ると出る「かんなくず」。長く捨てられてきたかんなくずを「木り絵」や「温泉」に再生し、福祉へつなげている人がいる。木月に住む小河原いづみさんだ。
かんなくずとの出合いは約10年前。自宅の改修時に目に留まり「あまりにもきれいだった」。大工に分けてもらい、小さな切り絵を作ってみたことが始まり。保湿方法や厚みなど試行錯誤しながら扱い方を探った。
小河原さんは本来、飽き性で恥ずかしがり屋だという。かんなくずに関しては「自分じゃないみたい」に貪欲になる。「絵すら描けなかったのにね。もっと知りたいという気持ちがわいたの」と振り返る。
作品づくりを続けるうちに、香りや手触りなど五感とのつながりや、丸めるだけで作品になる手軽さが福祉に生きるのではと感じ始めた。転機は夫の転勤でカリフォルニアに住むことになった2014年。大学が多い地域だったため、作品についてひたすらメール。唯一返信があった大学の美術教育のクラスで発表の場をもたせてもらった。「すっごく緊張した。でもここで福祉への可能性を再確認した」と語る。
帰国後、東京芸大の「アート×福祉」プロジェクトの初期生に応募。ここで生まれたのが、大量のかんなくずを温泉に見立てた「かんなくず温泉」。初披露した際、「入浴」する人同士の心の距離が近くなることに気がついた。かんなくずの前では、老若男女や障害の有無などの境はない。現在は障害児福祉の研究者とペアを組み、専門的な知識のもとワークショップを開催。障害児学級での授業も行っている。
一昨年、区外から木月に引っ越してきた。商店街とつながりができ、昨年は元住吉でもワークショップを開催。「これまでもかんなくずがたくさんの出会いや気付きを運んでくれた。今年も地域でたくさん活動できたら」。インスタグラムアカウント@soramame.gallery
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