田植えから収穫まで、市民が手掛けた米を使った川崎の地酒「出穂(しゅっすい)」の新酒づくりが、今年で5年目を迎える。企画に携わるメンバーは8月4日、市長室を訪れ活動を報告。市民の参加機会を増やし、自然や日本の伝統を伝えていく思いを寄せた。
出穂は農家や酒店らが市民と連携し、飛森谷戸(宮前区)にある約10メートル四方の水田で育てた酒米を使い、2018年に完成。以降、コロナ禍でも田植えや稲刈りに子どもも含め多くの市民が参加し、県内の蔵元・泉橋酒造で毎年千本以上が醸造されてきた。
この企画を進める「カワサキ地酒プロジェクト実行委員会」のメンバーは8月4日、市長室を訪れ、福田紀彦川崎市長に4年間の活動を報告。市民参加による継続した取り組みに市長は、「米づくりから携われるのは貴重な経験。出穂を川崎市の土産の一つにしたい」と期待を込めた。
市内では過去、「田ゆう」という地酒が販売されていた。しかし、農業関係者の高齢化などの理由で生産終了。同委員会メンバーは、川崎産の地酒を復活させようと、再び穂を出す意を込め「出穂」と名付け、市民と一体で酒造りに着手。酒米の品種も、栽培しやすいとされる「楽風舞」を選んだ。
出穂の売れ行きは好調で、メンバーの一人、とんもり谷戸の自然を守る会会長の高木一弘さんは「口当たりはさっぱり、深みのある味わいも特徴」という。それでもメンバーが目指すのは、売り上げ本数よりも市民参加機会の増大。来年は、栽培面積の広い水田に移すことも検討中という。
子育て支援の立場から企画に参加するNPO法人みどりなくらし理事長の堀由夏さんは「川崎の都心にいながら土いじりや緑溢れる自然に触れ、伝統の米作りを子どもの頃に体験できるのは大きい」と思いを込める。
出穂は、たけくま酒店(幸区)、ネットで販売している。
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