空き缶を使った提灯づくりを続けている人がいる。第8代中原消防団長の中田隆(ゆたか)さん(89)だ。空き缶一つ一つに切り込みを入れ提灯型に細工し、防災の願いを込めて「火の用心」の札を付け、中原消防署で配布している。
きっかけは2010年、中原区民祭で似た作品を目にしたことだったという。「自分にもできそう」と興味をもち、カッター、はさみ、けいびき、やすりなどを使って挑戦。初めは、安定感に欠け壊れたり、缶の切れ目で指を切ったりなど失敗もあったというが、試行錯誤の末、今の形にたどり着いたという。
一つ完成するのにかかる時間はおよそ40分。多いときには月に140個を作り上げる。コツコツと8年間積み上げてきたその数は、7月27日現在で9363個。もうすぐ1万個に迫るなか、中田さんは「今年度内に達成できたらいいけど難しいだろうね」と苦笑いする。
ビールは一切飲まないという中田さん。作業場に山積みにされた缶は、この取組みを知る仲間や知り合いから届けられたものだ。「応援してくれる皆さんの協力あってこそ」。「きれいだね」「かわいいね」―、缶提灯を手にした人から寄せられるそんな喜びの声がやりがいという。
区内各地に掲げられた消防団員募集の看板のキャッチフレーズ、「郷土愛」の文字を書いたのも中田さん。消防団からの依頼に応えたものだ。1950年から92年までの42年間、消防団として育んだ地域への愛着心は現役を退いた今も変わらない。「火の用心の想いを込めて」
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