第61回学展に多くの受賞者を輩出した「アトリエ一番坂」主宰 舘岡豊照さん 岡上在住 66歳
「型破り」な価値観育てる
○…「絵画の甲子園」と呼ばれる「学展」の第61回大会で、17人もの受賞者を輩出した。実に受賞者の約4人に1人が「アトリエ一番坂」の生徒。主催者側も驚く、前代末聞のできごとだった。最初は手探りの状態で始めた絵画教室。気づけば100人以上の生徒を抱え、多くの受賞者を輩出する「名物先生」になっていた。
○…1944年京都生まれ。日本画家の父のもとに育ち、高校3年生の時に初めて父に日本画の描き方を教わった。これを機に芸術家を志し、秋田から夜行列車に乗って上京。「美大では消灯後も目張りをしてこっそりと夜中まで日本画の勉強に明け暮れた」と当時を思い出す。卒業後は女学校の美術教師に。退職時には続投を望む生徒ら300人の「署名」が集まった。「教える喜びを知ることができたのもこの時」。退職後は彫刻家の妻と二人、百合丘にあったアパートの自室で小さな絵画教室を開いた。「子どもは本質を見抜く。柔軟な子どもたちに、力強い表現ができる油絵を教えようと思った」
○…創作意欲もいまだ衰えない。代表作は縦2メートル、横100メートルに及ぶ大作、「脈」。実に5年を費やした力作だ。黒いキャンバスに銀箔と金箔が踊り、「歌」「舞」「流」「酔」の4つのテーマで生きることの喜びを抽象的に表現した。「創作は自分との対話。集中して己の心に向き合う時間はかけがえのないものとなっている」
○…今後の目標は「表現の場を開拓すること」。これまでにも商業ビルの床や天井、商店街の大通りなど、日常の風景の中に子どもの絵を飾ってきた。「通りすがった人たちがふと足を止めて、見入る。それだけの力が子どもの絵にはある」。時には子どもたちが自ら展示の交渉にあたることも。「絵を通じて、何かを成し遂げることの素晴らしさを教えるのが使命だと思っている」と語る目には枯れる事のない好奇心が映りこむ。
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