特集 今、知りたい「福祉・介護の仕事」 これからの働き方を考える
少子高齢化が進むにつれ、注目が集まる「福祉・介護の仕事」。ニーズが高まる一方で、人材をいかに確保していくかという課題に直面しているのも事実だ。人が人を支えるという重要なこの仕事や、人材確保のために私たちのまわりで行われている取り組みなどについて特集する。
「高齢になった家族の介護が必要になった」―。このような声をふと耳にする機会が増えたと感じる人も少なくないだろう。福祉・介護サービスを受ける人の数は年々増加している。
サービス受給者は2倍以上に
「平成21年度介護保険事業報告(年報)」(厚生労働省老健局)の資料によると、約10年前と比べ、介護サービスの受給者数は2倍以上に増加している。さらにここ2〜3年間では増加のスピードが高まっていることがわかる(左表参照)。
こうした動きを受け、川崎市では昨年度中に「特別養護老人ホーム」5カ所と、「介護老人保健施設」1カ所を新たに開設した。今後は「福祉・介護職」のニーズがますます高まることが予想される。
福祉職の無料職業紹介事業を行う川崎市福祉人材バンクが取り扱う福祉求人を職種別に見ると、「介護職(ヘルパー以外)」が880と最も多く、続いて「看護職」が306、「相談・支援・指導員」が305となっている(2011年4月〜10月)。
特別養護老人ホームや介護老人保健看護職、有料老人ホームなどの職員、在宅介護をサポートするホームヘルパー、障害者関係施設などの生活相談員や指導員、施設で働く看護師、保育士などの求人が多い傾向が見られるが、求人に対し、充分な応募がない職種も目立つ。特に看護師は、医療分野での慢性的な人材不足などの影響を受け、福祉分野で求人を行っても応募者が少ないというのが現状のようだ。
求められる人材とは?
福祉・介護職のほとんどは支援を必要とする人に直接サービスを提供する対人サービスが基本となる。人と接する仕事では、温かな人柄や優しさなどのほかに、人と関わることが好きなどの資質を持った人が求められる傾向がある。また、介護職はチームで働く現場が多いため、コミュニケーション能力や組織的な仕事の仕方が求められるケースもあるという。求人の傾向としては、経験者やホームヘルパー2級以上の研修の修了者など、経験や資格を持った人が必要とされる場合がある。
やりがいはどこに?
「介護労働実態調査」(財団法人介護労働安定センター)によると「福祉・介護職」を選んだ人の理由は1位「働きがいがある仕事だと思ったから」(56%)2位「今後もニーズが高まる仕事だから」(37%)3位「資格・技能がいかせる仕事だから」(35%)という結果になった。
「福祉・介護職」は支援が必要な人に寄り添い、その生活を支えていく重要な仕事といえる。その人の人生や思いに寄り添う仕事はとても奥深く、本紙がこのほど行った職員へのインタビューでも、難しさや苦労も伴うが、様々な人と接する中で教えられたり、学ぶことが多いという声が目立つ(左上コーナー参照)。
人材確保の取り組みは私たちのまわりでも
今後ますますニーズが高まるであろう「福祉・介護職」の人材確保の動きは行政単位や地域レベルでも始まっている。川崎市は民間企業と協働で運営する就職応援サイトで「福祉・介護職」の特集を組むなどして仕事に関する情報発信を行っているほか、介護に関わる仕事を紹介した冊子「介護のプロになろう」を市内の高校生に配布するなどしている。こうした情報発信・啓発活動は「仕事を理解してもらい、興味を持ってもらう」目的に加え、「長期的に働ける人材確保・教育」を目的としたものが目立つのが最近の傾向だ。仕事についてただ紹介するだけではなく、10年後、20年後のキャリアプランや、管理者育成のためのプログラムが盛り込まれている。
人材育成は地域ぐるみで
麻生区内の小規模事業所からなる「神奈川県小規模事業所連携事業川崎市麻生区実行委員会」では、所属する施設の職員を集めた研修会などを開き、専門家に話を聞くなどして人材教育・連携強化を図っている。区内の小規模事業所間の情報共有や、人材育成に役立てたいと、これまでに介護の現場で必要なコミュニケーションを学ぶ研修などを実施している。代表を務める笠原泰子さんは「地域レベルで連携をはかるとともに、人材の育成という側面でも定期的に研修会を行っている。情報交換の場にもなり、地域全体で福祉の現場を支えていこうという姿勢が見えてきている」と話している。参考資料「JOBかわさき」
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