昨年10月の台風19号で、収蔵品の多くが水没した川崎市市民ミュージアム。7月30日、被災後初めて報道陣に内部が公開された。被災した地下収蔵庫は鼻につくほどカビ臭く、剥がれ落ちた壁や水圧で折れ曲がった鉄のドアなど、浸水の爪痕が深く残る。2階の展示室だった空間には修復困難と思われる美術品も並び、被害の悲惨さを物語っていた。
被災した約23万点の収蔵品が今年6月、地下から全て運び出されたため公開となった。現在は、水濡れではがれてしまった絵画や屏風などの紙作品を優先して応急処置作業が続く。洗浄して乾燥させ、館内ホールに緊急設置された燻蒸設備でカビを殺菌。仮設されたプレハブでスタッフがハケを用いて手作業で死滅したカビを払う。また、処置を待つ濡れた古文書や紙作品は腐敗しないよう、敷地内に置かれた冷凍・冷蔵コンテナで保管している。
応急処置後の美術品の本格的な修復作業は専門業者へ依頼している。市担当者によると、業者が修復困難と判断したものは、当該分野の専門家の意見を求めた後、市が処分か保管かの判断をする予定で、傷んだまま保管という判断もあり得るという。
市の担当者は「搬出は終わったが今後の作業は年単位で相当時間がかかる。少しでも早く作業を進め、多くの作品を修復したい。今後は外部の倉庫に移すことも考えたい」と話した。
今年の台風への備えとしては、水の侵入口となった場所に土のうを敷き詰め、水が溜まりやすい塀に穴をあけるなどの対策を講じた。
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