翻訳家の野坂悦子さん(上麻生・61)がこのほど、絵本『ねえさんの青いヒジャブ』(BL出版)の出版に訳者として関わった。イスラム教徒の女性が髪の毛を覆い隠すスカーフ=ヒジャブを通して、「世界には様々な価値観や文化があることを知ってもらえれば」と話す。
絵本はヒジャブをはじめて身に着けて登校する小学生を描く。編集者から翻訳の依頼があった時、手掛けたい仕事だと思うとともに、「難しい」とも感じた。「日本国内でもヒジャブを身に着けている人を見かけることが増えたが、知っている子どもたちは少ないはず」と伝わるかを心配した。
野坂さんは20代から30代にかけて、オランダやフランスで暮らした。海外生活を通じ、人種、文化の違う人たちが一緒に暮らすために必要なのは「寛容」だという。野坂さん自身も幼少時、どうしても仲良くなれない友だちがいた。大人たちは仲良くしろというが、「どうやって受け入れればいいのか分からなかった」と振り返る。自分の「理解」できないものとの関わり方を様々な価値観の中で身に付けた。
この絵本は、米国のフェンシング選手で米国女性として初めてヒジャブをつけてオリンピックに出場したイブティハージ・ムハンマドさんの体験をもとに描かれている。ムハンマドさんはあとがきで、ヒジャブを身に着けたことで「周囲のわたしに対する接し方がかわり、自分が『よそ者』になりうる」と記す。野坂さんは絵本を通して、『違うこと』に対する感情を他人事ではなく、自分のこととして感じて欲しいとし、「違うことに対して、分からないと心を閉ざすのではなく、一歩前へ踏み出してみては。『違うこと』で差別される人の気持ちを分かち合えれば」と話している。
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