県と政令市の二重行政の解消や権限、財源の移譲などを目指す「特別市」構想に関し、法制化を訴える川崎、横浜、相模原の3政令市の市長が7月27日に共同で会見を開き、「二重行政を完全に解消するため、新しい仕組みとして特別市が必要」と訴えた。特別市の必要性を巡っては、県と3市の意見が対立しており、事前に県が示していた懸念に回答した形だ。
「特別市」は、県が担う市域の河川管理や崖地の対応などの事務を全て市に移し、二重行政を解消させ、行政サービスの向上を図るもの。同時に市行政の仕事量に見合う地方税の配分を求める。実現には地方自治法などの法改正が必要だ。
川崎市はこれまで、新しい大都市制度として「特別自治市」の名称を使っていた。7月19日に県内3政令市など12政令市が参加し、福田紀彦川崎市長がリーダーを務める「多様な大都市制度実現プロジェクト」の会議で「特別市」が通称名として決まったため、対外的にも「特別市」を使うことにした。
政令市からは、40年以上にわたり、事務量に見合った税制度の創設を国に求める動きがある。福田市長は公約に特別自治市の実現を掲げ、今年6月には次年度の国の予算編成で、金子恭之総務大臣に制度の創設を要請。
県「サービスが低下」
県と政令市の役割分担について、5月に黒岩祐治知事と福田市長、横浜市の山中竹春市長、相模原市の本村賢太郎市長による懇談会が開かれた。
この中で3市長は「住民ニーズが多様化する中、地域特性に合わせた自治制度を再構築することが必要」と訴え、制度改革は急務だとした。これに対し、黒岩知事は二重行政について、図書館や公営住宅を例に「法令に基づく役割分担や住民ニーズに応じるもの」と非効率との指摘は当たらないとした。さらに、特別市によって税源が移譲されると、県税が減少し、政令市以外の行政サービスが低下すると主張。「住民目線から見て、法制化は妥当ではない」と政令市側の意見を否定していた。
「市町村に利点も」
3市長による共同会見では、「二重行政の解消には県市間の協議では限界があり、新しい仕組みが必要」と改めて主張。5月の懇談会で黒岩知事が見解として挙げた課題や懸念に対して3市の基本的な考え方を示した。
特別市が実現した際に「県の総合調整機能に支障が生じるおそれがある」という懸念には「政令市以外の市町村の補完・支援に一層注力することが可能で、県内市町村に対するメリットも期待できる」とした。ほかにも、県の財政不足拡大、県民・市民への大きな費用負担などについての考え方を明らかにし、「課題や懸念は当たらない」とした。財政不足の懸念には、「根拠となる数値を県から提示していただき、県・3市で研究・調査を行うことを提案する」と求めた。
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