フロンターレスタッフ執筆の本が脚光 スポーツビジネス・地域活性を指南
地域密着を掲げ、様々なプロモーション活動を展開するサッカーJリーグ・川崎フロンターレ。同クラブは「試合の勝敗に左右されないクラブ作り」を方針にファンの拡大に力を注ぐ。このほど、同クラブのスタッフが15年の経験をもとに、スポーツの持つ可能性を訴えた本を執筆し、脚光を浴びている。
本のタイトルは『(スポーツでこの国を変えるために)僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ』(小学館1470円〈税込〉)。6月17日に発売され、一週間足らずで早くも重版が決まり、売れ行きは上々のようだ。
著者の天野春果さんは川崎フロンターレに入社して今年で15年目。これまでFC東京との対戦を盛り上げようと、両チームの対戦を「多摩川クラシコ」として伝統の一戦に位置づけた企画を展開したほか、同クラブの選手を起用して作成したオリジナル算数ドリルの発行や市内の銭湯とのコラボレーション企画などのプロモーション活動の仕掛け人として知られる。昨年9月に執筆依頼を受け、フロンターレでの取り組みに一定の考え方がまとまったことから、出版に踏み切った。
同書では川崎市唯一の相撲部屋、春日山部屋とのつながりから共同企画に至るまでの経緯や本のタイトルのバナナを使った企画をはじめ、自身がこれまで手がけてきたプロモーション活動について、エピソードを交えながら紹介している。この中で天野さんは「クラブ作りの鍵を握るのは行政、街、スポンサー、サポーター、ボランティアなどとのつながり」。「集客の鍵は郷土愛にある」と、「スポーツを活用し、街を豊かにする」ことの大切さを訴える。
近年、日本の大学や専門学校ではスポーツビジネスが花盛りだが、大概はいわゆる移籍金や放映権といった話題ばかり。天野さんから見ると、こうした話題は「スポーツビジネスのほんの一部に過ぎない」と言い切る。むしろクラブ経営は「泥にまみれながら手間暇をかけてじっくり作物を育てる有機農業に近いものである」と強調し、日本におけるスポーツビジネスへの認識を変えてもらうためにも出版したのだとも語る。
天野さんのもとには複数のJクラブ関係者から「うちのクラブでも活用できる」と連絡が寄せられている。一方、行政からもまちづくりに役立つとの声が聞かれる。川崎市の魅力を発信するシティセールス・広報室の亀山貴さんは『行政や地域の活動に無償協力してフロンターレが目に触れる機会を増やす』という作戦はサッカーに限らず、各スポーツや芸術・文化団体にとっても大きなヒントになる。シティセールスにとってもお手本になる」と語る。スポーツビジネス書であり、地域活性化本、自己啓発本としても楽しめるとの声が聞かれる同書を天野さんは「フロンターレを知らない人にも手にとってもらいたい」と話す。
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4月19日
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