川崎区・幸区版 掲載号:2012年12月7日号
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記録映画「父をめぐる旅」に出演し、父・中村正義の足跡をたどった 中村 倫子さん 中村正義の美術館(麻生区)館長 56歳

また新たな正義に出会った

 ○…3年前、自身がきりもりする美術館を訪れた武重邦夫監督の一言で映画の撮影がはじまった。「倫子ちゃん、お父さんの映画を撮るよって。半ば冗談だろうと思っていたら、話がどんどん本格化して、気がついたらカメラの前にいた」。戸惑いながら、どんどん進む撮影に身を任せた。父の生涯を多くの人に知ってもらいたい反面、自らがスクリーンに登場することには抵抗を隠せなかった。だが、父のために多くの人が汗を流し、昼夜を厭わず作品に向かう姿を見るうち、この機会は父からの「贈り物」だと感じるようになった。

 〇…1956年、名古屋市生まれ。父が52歳で亡くなるまでの21年間をともに過ごした。若くして才能を認められ、日展の頂点に上りながらも、画壇の権威主義的体質に異を唱えた正義は、家では優しいごく普通の「父」だった。遊び場だったアトリエには、絵の具の匂いと、いつも父の姿があった。「私にとっては普通の父親。そういう思いは今でもあって。だから映画なんて大それたこと、多くの方が背中を押してくれなければ無理だった」

 〇…88年、麻生区細山にあった自宅を美術館としてオープン。春と秋にだけ開き、企画展を実施している。テーマを決めていくつかの作品を展示する作業は15年以上続くライフワーク。企画をするたびに、作風も題材も実に幅広い正義という画家の魅力を再発見する。「挑戦を忘れなかった父だった。新しい画材が出ると、すぐそれを使ったりして」

 〇…撮影を通し、また新しい父の姿が見えてきた。たどればたどるほど、どんどん見えてくる人間・中村正義の魅力。それを伝えることが自分の役目だと考えている。「今回の撮影でひとつわかったことがある。それは、父の絵を守り、未来につないでいくことを望んだのは、実は母だったということ。映画は正義の歴史だけでなく私たち家族の歩みや気持ちをも整理し、再認識させてくれた」
 

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