昨年10月の台風19号で浸水被害を受けた川崎市市民ミュージアムの収蔵品約23万点が6月19日、搬出を終えた。今後も洗浄やカビ取りなど修復作業は続くため、開館のめどは立っていない。
市は当初、被災した収蔵品の搬出について今年3月末までの完了を目指していたが、作業の遅れやコロナの影響を踏まえて延期。緊急事態宣言が発令された4月以降の作業は、美術品の洗浄など専門的な作業を依頼した外部団体が応援に来られず、作業はより難航していた。
作業が遅れたことに対して市担当者は「年度内というのはあくまで目安だった。圧倒的な数の収蔵品に対して慎重に作業したことで予定より遅くなった」と話す。
搬出した収蔵品は今後、洗浄やカビ取りなどが行われ修復される。現状、修復が行われたのは数点のみ。国や県指定の重要文化財などから優先的に取りかかっている。
状態が悪いものは修復が難しい場合もある。日本画家の大矢紀さんが、市に寄贈した30点以上の作品も保管されていた。大矢さんは「私の作品で修復できそうなのは7点のみと言われた。私にとって作品は子どものようなものなので簡単には捨てられない。少しずつ引き取って自分で修復している」と語る。
休館が続く同館に対し、修復済みや被害のない美術品を使って展示会を開いてはという市議会議員の声もあるが、市担当者は「今は収蔵品を助け出すことで手一杯」と難色を示す。開館についても「建物自体、修理するのか移転するのかもこれから話し合いを進めていくところ」とし、再開の見通しが立たない。出水期の備えについては、温度や湿度が管理された貸倉庫に保管しているため問題ないとしている。
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