JR川崎駅北口近くにある「川崎浮世絵ギャラリー〜斎藤文夫コレクション〜」で『広重と巡る名所江戸百景』の後期展が8月16日(日)まで開かれている。
江戸時代後半の浮世絵師歌川広重の「名所江戸百景」は、安政3年から同5年(1856〜58)にかけて制作された最晩年の大作。広重による118枚、図案家梅素亭玄魚による目録、二代広重作とされる図を含めた揃物である。
広重は江戸とその郊外の風景を様々な角度からとらえ、縦長の画面に遠近法の視点を大胆に用いて、近景に様々な事物を極端に大きく描く奇抜な構図の数々で「見る者に驚きをもたらした」と同ギャラリーの学芸員・蛭田裕紀子さん。また、高度な彫りや摺りの技法が多く見られたことから、「彫師摺師の研ぎ澄まされた技術がこの名作を支えていることが分かる」とも説明する。「大はしあたけの夕立」や「亀戸梅屋舗」といった作品は、ゴッホやホイッスラーをはじめ19世紀ヨーロッパの画家たちに大きな影響を与えたことでも知られる。
今回は「名所江戸百景」秋・冬の部を公開。翼をひろげる大鷲が洲崎の広大な埋立地を俯瞰する様子を描いた『深川洲崎十万坪』をはじめ、浅草寺雷門から眺める境内の雪景が美しい名作『浅草金龍山』など60点を展示する。
有名作の見どころ
蛭田さんによると「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」(安政4年<1857> 魚屋栄吉 大判竪)は「名所江戸百景」の中でもあまりにも有名な一枚。「十万坪」と呼ばれた深川洲崎の広大な埋立地の上空に、一羽の大鷲が翼を広げ、海には樽(棺桶)が物悲しく漂う様子が描かれている。大鷲の目は獲物を見据えているように見え、遠景には筑波山が描かれ、一面に雪が降り積もる。「洲崎には洲崎弁天社もあり、潮干狩りの名所としても知られる景勝地だったが、広重はその外れに広がる荒涼とした土地を選び、生と死への深い視点を感じる特異な風景を描いた」と説明する。
「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」(安政4年<1857> 魚屋栄吉 大判竪)は吉原の妓楼の室内。猫の眺める先には、鷲大明神の酉の祭の参詣者たちが描かれている。商売繁盛を願う縁起物の熊手を持ち、列になっている人々が見え、室内には土産物の簪が描かれるなど外の世界との対比が描かれている。「背中を丸めた猫の姿が可愛らしい」と蛭田さんは語る。
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