川崎の海から作った塩を通して地域のつながりや地元への愛着を育もうと「縁(=塩(えん))結びプロジェクト」が進んでいる。産業振興会館内のカフェで勤務する田邊奈穂さん(幸区古市場在住)が中心となり、「川崎で行われていた製塩の歴史を子どもたちにも知ってもらいたい」と、7月17日には塩作りキット100個を児童に無料配布する。
塩作りに着手したのは昨年の夏。田邊さんが働くカフェ「まんまmiyu」の岩(いわ)篤志さんから、川崎の塩作りの歴史などについて話を聞いたことがきっかけだ。
2年程前に幸区に越してきた田邊さんは「川崎に海があることも知らなかった」と興味を持った。岩さんと協力して東扇島に海水を汲みに行き、ろ過して窯で煮詰め、塩を抽出。様々な製法で試行錯誤して作り上げた。
当初、食用として商品化を目論んでいたが、「川崎の工場や公害のイメージが先行してしまう」と、現状では安全性を訴えることが難しいと判断。活用法を検討する中で「まずは川崎の海が様々な人の手によってきれいになっていることを伝えたい」と、夏休みの自由研究としても活用できる塩作りキットの無料配布を決めた。田邊さんは「自分の娘はもちろん、子どもたちが環境への取り組みについて考える機会になれば」と話す。キットに入った海水を10分から15分程弱火にかけると塩ができる。配布は7月17日午前10時から同店で。先着順。
今後はSDGsを推進する地元企業とタッグを組んだ取り組みや、塩を使ったボディスクラブ、化粧品の開発など活用の可能性を模索していくという。2人は「川崎の塩を通して、様々な企業や団体の縁をつなげ、地域を盛り上げる力になれば」と展望を語る。
江戸から明治時代大師河原で生産
川崎の塩作りの歴史は江戸時代に始まる。市教育委員会のウェブサイトによると17世紀中ごろから大師河原で製塩業が行われ、1905年の塩の専売法施行に伴い、1910年に個人での製塩が禁止されるまで続いた。
大師河原の塩は苦汁を多く含んだ赤塩で良質なものではなかったが、関東で最も盛んと言われた下総行徳(しもうさぎょうとく)(現千葉県市川市)の塩田に次いで江戸幕府から重要視されたという。川崎区塩浜にある塩釜神社の狛犬の台座には塩の取り引き先の名前が刻印されており、歴史を感じることができる。
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