市民生活や地域風土に根ざして継承されてきた文化財を市が新たに顕彰する「川崎市地域文化財」。第4回(2021年度)選定で、地元からは川崎区の「稲毛神社御神木大銀杏」と幸区の「御幸中学校三樹苑記念碑」が選ばれた。前回は両区からの選定はなく、2年ぶり。第1回目からの市内総数は190件となった。
稲毛神社の御神木大銀杏
川崎区宮本町にある稲毛神社の大銀杏。樹齢一千年といわれる御神木で、戦前は神奈川県指定の天然記念物に指定されていた。由緒書きによると、1945年、戦火により5日間くすぶり続けた。大きな損傷を受け、一時は枯れてしまうのではと懸念されたが、その後残った幹の樹皮から若枝が生え、葉がしげってきたという。江戸時代には東海道を往来する旅人から川崎宿のシンボルとして親しまれ、安藤広重の『武相名所旅絵日記』などにもその姿が描かれている。
今回は、歴史を物語る貴重な文化財として推薦された。市担当者は「川崎区だけでなく市内全域の市民に広く知っていただきたい」と話す。
86年には同神社境内整備事業の一環で、ご神木の周囲に十二支のブロンズ像を設置。「十二支めぐり」として整備された。各像にはそれぞれの干支に関する紹介文も書かれている。今年の干支・寅には「義に強く、侠気に富み、後輩を引き立てる〜日ごろ、堅実な努力を積んでいれば、勝負どきに素晴らしい強さを発揮する」との言葉が並ぶ。市川和裕宮司は「選んでいただくと自分たちの意識も変わる。しっかり大切に残していきたい」と思いを語る。
御幸中学校の三樹苑記念碑
幸区戸手にある市立御幸中学校(石塚全校長)の玄関正面にある石碑。梅、松、藤の三樹が植えられた庭園「三樹苑」の完成を記念して1956年に建立された。高さ90センチメートル、幅54センチメートル、厚さ13センチメートルで、碑の表面に「三樹苑 斗南題」と書かれている。斗南は川島照三第2代校長の号。裏面には三樹苑の梅、松、藤は校訓の、みさを(節義)、まこと(誠心)、のぞみ(理想)を象徴するものであること、同窓生にとって母校は心の光であることなどが記されている。みさを、まこと、のぞみは川島校長が作詞した校歌にも詠み込まれている。
同記念碑は生徒たちの精神的シンボルであり、校内だけでなく同窓生や保護者などを通して、地域でも知られた存在であることから、地域文化財としてふさわしいと推薦された。
石塚校長によると、みさをは社会ルールを身につける社会性、まことは自ら学び、互いに学びあい、高めあう精神を身につける個人性、のぞみは苦難にあっても大きな希望をもつ将来性を示すものだという。「今に通じるこれらの言葉を残した川島校長はわが校の礎を築かれた大きな存在です」と思いを馳せた。
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