養父から虐待を受け、相模原市児童相談所に通所していた当時中学2年の男子生徒が、自殺を図りその後死亡した事件を巡り、市はこのほど対応の問題点や再発防止策をまとめた報告書を公表した。その中では、両組織内で情報共有が徹底されておらず、虐待への危機感が不足していたことなどが問題点として指摘されており、子どもの命を守るために、再発防止策の着実な実行が求められる。
報告書によると、男子生徒は遅くとも13年11月頃から虐待を受けており、同時期から学校を通じ中央こども家庭相談課が支援にあたっていた。14年5月には養父からの暴力により自宅を抜け出し、近くのコンビニに助けを求め、警察が対応する事態があった。
この事態以降、男子児童への支援は市児童相談所が担当し、同年6月から計6回、親子との面接を実施。その間、親からの暴力は確認されなかった。ただ、面接の内容は「(男子児童が)言うことを聞かない」など親からの相談への対応が多く、男子児童が口にした「施設で暮らしたい」の言葉や養父に対して嫌悪感を持っていることに関して、児童相談所は強制的に行える一時保護の検討をせず、具体的な対応策を講じることはなかった。そして同年10月、実母の体調不良を理由に面接の継続が終了すると、その後養父からの暴力が再び確認されたが、担当の児童福祉士は上司への報告をせず、本来であれば行う必要があった会議は開かれなかった。生徒はその後、自殺を図り死亡した。こうした一連の対応の中で、男子生徒に寄り添う気持ちが不足しており、結果的に尊い命を失うこととなった。
報告書内では、再発防止策として市と児童相談所の役割、責任を明確にすることや、担当者の判断だけに頼らず組織的な対応を行うこと、職員一人一人が、常に子どもにとって何が良いのかを一番に考えることなどが挙げられた。