神奈川県は6日、現時点で全面的な建替えが決定している「県立津久井やまゆり園」について、建替えを行う上で「人権配慮と安全確保の両立」などを重視する基本的な考えを示した。
今回示された県の考えでは、同園を現地で全く新しい建物として建替えることで、「理不尽な事件に屈しない」というメッセージを発信していくことなどを基本理念に据えた。園再生の軸となるコンセプトは「人権の配慮と安全確保の両立」と「生活環境の充実と地域への移行」。具体的には施設を囲む塀などを取り除き、現状の2人部屋から全て個室とするなど入居者の人権が配慮されている。一方、防犯ガラスの取り付けや警備会社と連動した防犯カメラの設置など事件の教訓を踏まえた、警備体制の強化も重視されている。
同園を巡って県は事件後、再生に向けて施設の大規模改修か全面的な建替えかを選択肢に協議を重ねていた。一方、同園入居者の家族らで構成される家族会、施設の指定管理者である「かながわ共同会」は現地での建替えを強く要望。県は家族会らの意向を踏まえ、改修では現場で働く職員が過去の記憶に捉われてしまい心理的な負担が大きいと判断し、現地での建替えを決定していた。
県主導に疑問符
10日には県主催で、障害者団体らを対象とし、やまゆり園建替えに関する公聴会が横浜市内で行われた。
当日は1団体3人までと制限が設けられる中、有識者13人を含め27団体から68人が参加。はじめに、県から現時点での基本的な考え方の説明がなされ、その後、参加者は3部屋に分かれ、県の担当者らに対して思いを投げかけた。
公聴会に参加した障害者家族らで構成される「神奈川県手をつなぐ育成会」の依田雍子会長は本紙の取材に対し「園の再生に関して、県はスピード感を持ってやっているが、全て県主導で行われていることに違和感がある。当事者の声が反映されるかも疑問だ。また、示された施設案は以前とそれほど変わらず『再生のシンボル』としてふさわしいものなのか」と話した。
他の参加者からはハード面だけでなく、職員への教育などソフト面の改革や慰霊碑の設置を求める声が挙がった。県はこれらの意見を踏まえ、今年度中に建替えに関する基本構想を策定する予定だ。
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