原発20Km 福島県田村市へ
「(震災は)まだ6年。本当の意味での復興は進んでいるとは思わない」。そう話すのは、桜美林大学で国際協力のゼミに所属する木村さおりさん。同大での授業を契機に宮城県の被災地ボランティアへ参加、その後原発問題に関心を寄せた。大学生活の多くを復興支援に注いできた彼女だが、自身が肌で感じる被災地の現在と「復興」の文字との間には違和感があるという。
彼女が足を運び続けたのは福島第一原発からほど近い福島県田村市。原発20Km圏内に避難指示が出され、その後も警戒区域に指定、2014年の解除以降も過疎化が問題となっている町だ。木村さんはゼミ内の有志で集い、同市内の都路(みやこじ)町を中心に復興支援に取り組む「都路プロジェクト」に参加。約2年間、現地のボランティアと一緒に町のPRのほか、同大の学祭でチャリティーイベントを企画するなど地道な活動を続けてきた。木村さんは現地の人たちについて「当時のことを思い出したくない人も。心のケアはまだまだ」と語る。プロジェクトに参加した当初は、住民から「君たちは何がしたいの」など活動への疑問の声も多く、「自分にも何かできないか」という気持ちは、実際に傷ついた人々の心に真っ直ぐ届かないこともあった。
震災以降、ボランティアやメディアの取材が殺到した同市。木村さんによると町の一部では建物の建て替えなどが進み、確かに一見復興は進んでいるように映るという。しかしその一方で、原発20Km圏内と30Km圏内のわずかな距離の違いで、国からの援助金が打ち切られ途方にくれる人々や、震災以降、ボランティアやメディアへの取材対応に疲弊した住民も多いという。
そんな複雑な状況の中でも木村さんらは、活動を続けることを選択した。メンバーの中で決めた課題は「とにかく直接行くこと」。わずかな打合せの際にもできる限り現地へ。毎月夜行バスで足を運び、できることを探し続けると、住民から相談を受けることも自然と増えていった。昨夏には、現地の伝統行事「灯祭り」へ招待され、約1万本の竹を共に設置。火を灯した時は言葉にできない思いを感じたという。同ゼミでの活動は4年への進級を区切りに卒業する木村さん。「せっかく繋がった都路の人たち。これからも関わっていきたいです。後輩たちに活動を繋いで、学生ボランティアにできることが増えていけば」。本当の意味での「復興」を問い続ける。
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