神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙

  • search
  • LINE
  • MailBan
  • X
  • Facebook
  • RSS

座談会形式の特別企画 地域で考える保育のカタチ

教育

公開:2017年4月27日

  • X
  • LINE
  • hatena

 全国で待機児童や保育園・保育士不足などが問題となる中、社会課題として保育が大きな注目を集めている。今回、市内で保育支援に従事する6人の参加のもと、それぞれの現場で感じている課題や今後について話し合い、地域における「保育のカタチ」について探った(取材は4月22日時点/敬称略/聞き手・さがみはら中央区編集室 坂元かおり)

相模原の待機児童

 -今年の現段階での待機児童の現状をお聞かせください。

米多 平成27年・28年と2年連続で待機児童はゼロと発表させて頂いております。ただゼロと申しましても、実は希望する認可の施設に入れない方というのはたくさんいらっしゃるんですね。その中で、例えば「ここの保育園にしか行きたくない」という方や、認定保育室などをご紹介して「じゃあそこへとりあえず行きましょう」という方は、待機児童から除外していいということになっています。入れなかったお子さんから除外していい数を引いた結果がゼロですので、まだすべての保護者さん、お子さんが希望通りの施設に入れていないというのが現状です。そうした中では、市としても様々な保育ニーズに合う形で施設の整備による受け入れ枠の拡大というものには取り組んでいきたいというところでございます。

 -保育所に申込みしたにもかかわらず入所できなかったお子様(保留児童)は今年、どれほどいらっしゃいますか。

米多 集計中でまだちょっとわからないのですが、相模原市の全体的なところを申しますと、いわゆる0〜5歳の保育園に入る対象のお子さまというのは、ここ2・3年、毎年500人ずつ減っています。ですが、保育園に入れたいという保護者さんは増えているので、どうしても保育園が足りない状況が続いてしまうというところです。これが、どのくらいのところで均衡していくのかというのが、なかなか見極めが難しいところかなと思います。

 -そうした中、新たな保育の受け皿として、従業員のお子さまを預かる保育所(事業所内保育・企業主導型保育)を運営されている企業や社会福祉法人が市内にもございます。事業を始めた経緯と、なぜ従業員だけでなく地域の子どもたちも受け入れる「地域枠」を設けられたのかお聞かせください。

赤間 結婚されて子どもさんができて仕事に就けないという人も多かったし、何かしなくちゃいけないと。つくる必要性があるのかと言われることもありましたけど、「従業員のために」という思いでつくりました。地域枠については、地域貢献・社会貢献というのが社会福祉法人のあるべき姿ですので、ニーズがあるのであれば、わたしたち法人は地域と繋がっていきたい、そういう思いからです。

村田(崇) とにかく将来のこどものために何かをしなくちゃいけないというのが以前からありましたので、そのためにまずどこかでやろうと。地域を、相模原を、上溝を大事にしていきたい。やっぱり自分の生まれ育ったところですので。将来を担う子ども、世に出る子どもが育ってくれたら、こんなに嬉しいことはないですからね。

 -保育所を選ぶ際、保護者の方は事業所内保育・企業主導型保育を選択肢の一つとして考えておられるのでしょうか。

長沢 保育園を利用しようと思っている人は知っているかもしれませんが、施設の種類や利用方法などについてはスタッフもほぼわかっていないと思います。お母さん方にアドバイスする立場としては知っておいてほしいですね。私も十数年活動していて、発信するのは大事なことだと感じています。ただネットだけではダメで、会って実際に話を聞く、繋いであげる、そういう機会で保育園の話・種類ですとかを話すのも良いと思います。

米多 市にはすくすく保育アテンダント(保育専門相談員)がいます。落ちてしまった人のフォローだけじゃなくて、そういった施設も良いんだなと思っている人も少しずつ増えてきていて、選択肢の一つとして考えてもらえるようなアナウンスが必要と感じています。

赤間 保護者の皆さんに、それぞれの施設の特性とか、認可保育所、小規模保育がこういうもの、というのを出してもらえるとわかりやすいと思います。いかに知っていただくかが大事ですよね。

武田 まず知って頂かないと来て頂けないですし、小規模保育のような施設がいっぱいあることを知って頂くことが大事だなと思います。

保育の実情と課題

 -現実問題、保護者の方は子育てや保育にどのような悩みを持たれているとお感じですか。

村田(加) さっきの待機児童のお話のところにもかぶるんですけど、お母さんたち、慌てて働きたいと思ってないんですよ。慌てて社会に出たいとは思ってなくて、すごくお子さんのことを大事にしていて、できればお子さんの傍にいたい、けど保育園に入れなかったら会社に戻れないから保育活動するみたいな、なんかもう本末転倒の状態になっていて。待機児童、待機児童といっても、必ずしも保育園を整備することが子育ての悩みを解決することに繋がらないんじゃないかなと私は思っていて。

赤間 比較的、相模原市内は逼迫(ひっぱく)してないの?

村田(崇) 大都市とこういう地域の差だと思いますよ。

村田(加) 実際、お母さんたちが何を求めているのかって、子育て仲間を求めてますよね。

村田(崇) お母さんたちが孤立しているところがあるんですよ。子育てに悩んでいるというか、子育てを知らない。昔はお年寄りがいて子育てを教えてきましたが、それが核家族化のために全部排除されちゃった。家庭が孤立したがために、お母さんたちが勉強するところがないし、子どもをどうしたらいいかということを一人で悩んでいるお母さんがいっぱいいる。そういうときにやっぱり仲間がいて、同じ環境の中でストレスもそこで発散しながら子育ての勉強もして。

米多 相模原市の中で常に保留児童が出てしまうのが、相模大野駅の周辺と橋本地区。とにかくマンションが出来て、新しい方がどんと入ってくるところ。最近は淵野辺もそうなんです。大きなマンションができてしまって、そこがとにかく保育需要が高くて、そういう方って、いわゆる三世代で住んでらっしゃるところはほとんどなくて。若いお父さん母さんと小さいお子さんで来て、頼るところがなくてどうしても保育施設に面倒を見てもらわざるを得ないところがきっとあって。なので、そういう方が少しお仲間ができて、別に家で子どもの面倒をみていることが悪いことじゃないんだと。なんとなく今、家で面倒をみていらっしゃるお母さんて、「働いてない人」っていうイメージになってしまっている印象で。

村田(加) そうなってると思いますね。やっぱり国の政策をみてると、みんな働かなくちゃいけないのかなって思いますけど、子どものことを考えると、0歳〜3歳の時期って親御さんと愛着形成するすごく大事な時期なので、その時期に無理に引き離すのではなくて、今度できる子育て支援センターってすごく重要な役目だと思ってて。それが各区にあって、そこにお母さんが集ったりとか、またさらに子育て支援センターから派生された子育てサロンなのかわからないですけど、地域の拠点があるとお母さんたちが自由に行きやすいかなとは思うんですけどね。

赤間 ニーズも二極化してるでしょ。今言ったように、そういう世代もいるし、例えば経済的な部分、母子家庭だったり障害を抱えている子どもさんがいらっしゃる家庭がある中で、現実的に逼迫している方々もいらっしゃったり。すごくニーズが二極化している部分があって、それをどうフォローアップしていくか、保育事業の機能がちゃんともっと明確化していかなくてはいけない。

武田 認可保育園に長くいたのですが、小さいときに預けたい、子どもももちろん大事だけど、社会に戻りたいというお母さんが多かった。あとは家庭の事情で働かざるを得ないという方も多かったですね。やっぱり子育てサロンに行かれる方というのは、ある意味、子育てを楽しむ生活面に余力がある方たちなので、ちょっと「入りたい」という気持ちの種類が違うんですね。

長沢 子どもセンターを使った子育て支援事業もこれから進んでいきますけど、その中で本音を話せないお母さん方のフォローをしていく体制をつくらなきゃいけないとは思っています。オハナさんを利用している方も友達の中にはいらっしゃいますけれど、そこまでもいけない、子どもセンターには来るんだけど「いいな」と思ってもオハナに通えないお母さんも実際いる。だから、どっかでフォローしてあげないといけないんですけど。それが市の施設だったり、公民館とかのサロンだったりとか。そこから保育園とか施設に繋ぐようにしないと、お母さんたちもお金だけじゃなく、必要な幸福感は得られないんじゃないかなと思います。

米多 施設をつくってそこで保育することだけが保育ではないですね。保育施設をつくるのとは別の視点で、地域のお母さん、保育園を必要としていないが子育てに困っているお母さんへのフォローをどうしていったらいいかしっかりやっていかなきゃいけないと思うし、そういうことが上手くできて、「相模原が子育てに優しいまち」だと大きな声を上げて言えるような、皆さんのお力を借りながらそういう地域になりたいと思っていますね。

これからの保育のカタチ

 -今回の座談会を通じて、本紙としても一層、読者の皆さまの子育てに役立つ情報の発信に努めてまいりたいと考えております。それぞれのお立場から、今後より力を入れて取り組まれていきたいことをお聞かせください。

米多 施設をどんどんつくっていく必要がない時代がもう間もなく訪れると思います。地域の子育て家庭に対する支援ですとか、「保育の質」の部分。今度はハード面だけでなくてソフトの部分の充実に入っていかなくてはいけないところです。相模原市がそこが十分かというと、仕組みとしてはつくっているんですけど、機能してない部分ももちろんありますし、情報が十分取りきれていないところもある。本日出席させて頂いて期待がもてるのは、地域に保育・子どもたちへの思いを持って頂いている方がたくさんいらっしゃって、そういう方々と協力しながら、子育てしやすいまち・相模原をめざしていけるのかなと非常に感じられました。そういう方向で市も進んでいけたらなと思っております。

赤間 我々のほうもそれぞれの社会資源がもっと繋がっていかないといけないと思っているんです。救えるセーフティネットになる地域のありかたを、私たち自身も振り返って考えていく必要がある。どうしたっていつも弱者が救われないというか、制度ができてもそこからこぼれてしまう人たちがいて。世の中って、若い世代の方々もそうだけど社会的につながることが不器用な人も沢山いると思う。そういう人たちに、もっと目を向けていかないと。潜在的な方々を私たちがきちんとフォローアップできるような体制を作るために、もっとそういう方々に目を向けた情報発信、立場に立ってどう救えるかを考える必要性があると思います。

武田 一つひとつの園は微力ですけれども、それぞれが力を合わせて、相模原の子どもたちを良い環境で育てていければ。私たちの園は特養の中にあり、常に高齢者の方々がいる中で過ごしながら毎日保育をしている。こういう特色を、つくられた高齢者と子どもの関わりでなく、当たり前のようにいつも自然にそれぞれが一緒にいられるようなそんな保育園にできるように私たちも努力していきますし、お母さん方にも小規模保育を知って頂いて子育てに活用して頂ければと思います。

長沢 今活動を始めて4年目になるのですが、やってきて思ったのが、ただ教えるだけじゃ、講座を開くだけじゃダメ。教わっただけで知った気になってしまうので、継続してフォローしていけるような子育て支援をしていかないとお母さんに良いことを教えたとしても続かないんです。そういうお母さんたちが、疑問に思ったことなどを聞ける場をつくっていかなくてはいけないなと。相模原市にはただのボランティアでなくスキルを持った人がたくさんいるので、そういうのを上手く繋いでいけたら、相模原のママたち・子どもたちのために活躍して盛り上げていってくれるのではないかと思ってます。

村田(崇) 子育てがしやすい地域、そういう市があると、全国に向かって発信できるような土俵をつくって頂ければ有り難いかなと。子どもたちの地域との関わりが減っている中で、子育て事業の中で、全国から注目されるようなそういう地域になれればいいですね。

村田(加) 自分たちに出来ることは限られてしまうんですけど、横で手を繋いで、相模原市って素晴らしいと感じている人がこれだけたくさんいるので、それを外に発信しつつも中の人たちを大事にするという、地域活動だったり地域の人同士の繋がりをつくることが大事だと思います。

 -本日は議論頂き、どうもありがとうございました。



【読者の声】

 ただ施設の数をやみくもに増やすのではなく、保育の質の向上や施設の場所などの環境に配慮しなければならないと思います。また、相模原で子どもを育てるのに魅力的な制度をつくる必要があり、母子家庭に対する優遇措置の向上・税制上の優遇・心のケアなどの対策など、相模原で子育てをしたいと思ってもらえる環境づくりが重要と感じます。(相模原・46歳・男性)

 各職場に保育施設をつくるか、自宅で仕事が出来る環境をつくるなどの義務付けをし、親子のスキンシップ重視のためにこのような環境づくりが大切だと思う。(中央・50歳・女性)

 保育園は朝7時〜やっていて、今は時短勤務で7時台に預けて仕事に行けてお迎えもギリギリ間に合うような生活をしていますが、小学生になると時短勤務も終了し、学童の時間も休みの日は8時〜になるのでどうしたらいいのか、今から不安でしかないです。(緑区大山町・30歳・女性)

 働きながら子どもを育てやすい環境、繋がりを期待します。子ども会や自治会の役員は昔からやり方が変わらず労力が必要な為、働いている人はなかなか入りたがりません。時代にあった役員の仕事改善、まわりの理解も必要だとやってみて思いました。(清新・32歳・男性)

 待機児童、待機児童と騒がれていますが「保育園を増やす」「受け入れ人数を増やす」とそちらの方面ばかりが見直されようとしていますが、せめて3歳、少なくとも2歳くらいまでは親元で育てられるような取り組みを考えてほしいと考えます。(千代田・53歳・女性)

 祖師谷公園内に「そしがや保育園」を開設した世田谷区等の取り組みを参考にして、子育て支援という大局から眺めてさらに数歩進めて、レイッキプイスト(フィンランドの児童公園)のような、総合的・複合的と呼べるような、新しい遊び場事業&児童育成支援事業を、政令指定都市相模原で整備し発信していくことはできないでしょうか。(男性)

相模原市のご葬儀

ニーズに応じた家族葬プランをご用意

https://ceremonyhouse.jp

<PR>

さがみはら中央区版のローカルニュース最新6

児童がキャラ考案

富士見小

児童がキャラ考案

地元産キウイの普及へ

4月23日

新人にマナー研修

「とぶ」生き物が集合

「とぶ」生き物が集合

ふれあい科学館で企画展

4月20日

恒例の「ぷちまるしぇ」

恒例の「ぷちまるしぇ」

4月28日、横山台で

4月19日

五月人形がずらり

五月人形がずらり

田名民家資料館で展示

4月18日

人気の「溝の朝市」

上溝商店街

人気の「溝の朝市」

4月21日開催

4月18日

意見広告・議会報告政治の村

あっとほーむデスク

  • 4月6日0:00更新

  • 3月30日0:00更新

  • 3月23日0:00更新

さがみはら中央区版のあっとほーむデスク一覧へ

バックナンバー最新号:2024年4月23日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook