あの悔しさから約2カ月半。地元ラグビークラブの三菱重工相模原ダイナボアーズは新シーズンに向け、海外でも経験豊富なグレック・クーパー氏(53)を新たにヘッドコーチに迎えた。10年ぶりのトップリーグ(TL)昇格を目前で逃した失意の昨シーズンから、クラブをどう指揮し、どう導いていくのか。めざすスタイルやその哲学について新指揮官の思いに迫った。
昨季は、ここ数年で最も昇格に近づいた年だった。今年1月のTL昇格をかけたコカ・コーラとの最終入替戦。三菱重工は思惑通りの展開で試合を進め、後半18分までに10点のリードを奪う。だが、5年連続で昇格の夢を絶たれていた「鬼門」がまたも立ちはだかる。36分に5点差とされると、残り1分でコカ・コーラに執念のトライを決められ万事休す。選手たちは終了のホイッスルとともにその場に崩れ落ちた。
「自分にとっても挑戦」
チームスタイルの刷新を―。佐藤喬輔前監督の退任後、白羽の矢が立ったのが、ニュージーランド出身のクーパー氏。同氏は国際リーグ戦・スーパーラグビー所属のハイランダーズや、TL常連のNECグリーンロケッツを率いていた過去を持つなど経験豊富。TLの下部リーグ・トップチャレンジリーグに所属する三菱重工を選んだ理由について同氏はこう話す。「NECの頃、日本文化やライフスタイルに魅力を感じ、海外で指揮を執った後も日本に戻りたいと思っていた。その中で、三菱重工は昇格をめざす挑戦を毎年続けている。自分にとっても良いチャレンジだった」。クラブに合流後、最初に感じたのは選手たちのある意識の高さ。「『TLに昇格したい、復帰したい』という思いを強く感じた。前監督が良い基礎を作ってくれていたのでチームレベルはとても高かった」とクーパー氏は話す。
現在は、自身がめざす攻守両面でのアグレッシブなスタイルを浸透させるべく、選手たちに日々ハードな練習を課している。とりわけ「攻めるディフェンス」と「フィジカル面の強化」に注力しており、選手たちの戦術理解も着実に深まっている。新シーズンのキーマンという問いには、「私の哲学は『個人でなくチーム全体』。個々に素晴らしい選手はいるが、互いに理解し合うことが重要」と一言。その中で、NEC時代を共にし、互いを理解し合う間柄として、キャプテンにはNo.8の土佐誠を据えた。「積極性や向上心、ハングリーさを持つ。人間性も優れており、プレーだけでなく規律面でもリードをしてほしい」とかつての教え子へ期待を寄せる。
「自信」が昇格に
クラブが悲願のTL昇格を果たす上で必要なことは―。クーパー氏が挙げるのは二点。「1つはシーズンまでの時間を上手く使うこと。ディフェンスとフィジカル面の強化に加え、セットプレーの安定感を高めたい」。そしてもう一つは、「ビリーブ=信じること」。三菱重工は過去6年連続、最終入替戦で惜しくも涙を呑んできた。「勝負弱い」と揶揄する声も一部あるが、裏を返せば、トップリーグのクラブと互角に渡り合える地力がついた結果とも言える。「必ず昇格できると信じること。そうすれば迷いもなくなる。自信を与えてあげたい」
クラブは現在、プレシーズンの真っただ中。今秋開幕予定のトップチャレンジリーグへ向け、指揮官は「昇格を果たす」と自信をみなぎらせる。そして、常にサポートを続けるファンへの感謝の気持ちも忘れない。「ファンの方の声援が力になる。私たちは本気で昇格をめざしているので、それを信じてほしい」。指揮官と選手たちの信念。それが一つになった時、「昇格」の二文字は現実のものとなる。
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